WELLBEING MAGAZINE

ウェルビーイング経営の取り組み事例9選と施策・成功のポイント

ウェルビーイング

記事掲載日:2024年10月29日 
最終更新日:2024年10月25日

従業員の健康と幸福を重視する「ウェルビーイング経営」が、近年注目を集めています。従業員の幸福度が高まると、生産性の向上や離職防止、組織全体のエンゲージメントの向上などの効果が期待されています。しかし「どのような施策をおこなうべきなのか」と悩む方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、ウェルビーイングの3つの要素である「心理的」「社会的」「身体的」に分けて、企業の取り組み成功事例と施策を解説します。また、施策を成功に導くために欠かせないポイントや、ウェルビーイングの状態を数値化する診断ツールも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

メタメンターが提供するウェルビーイング診断では、ウェルビーイングを数値化し従業員の現状把握ができるので、効果的な施策の検討が可能です。施策のヒントを得たい方は、以下よりぜひご活用ください。

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ウェルビーイング経営とは従業員の心身の幸福を重視した経営

ウェルビーイング経営とは、従業員のウェルビーイング(心理的・社会的・身体的な幸福)を重視し、企業全体の成長を目指した経営手法です。厚生労働省は、以下をウェルビーイングとして定義しています。

「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」
引用:「雇用政策研究会報告書 概要」|厚生労働省

ウェルビーイングが注目される背景として挙げられるのは、厚生労働省の報告書です。報告書の中では「ウェルビーイングの向上が企業の生産性向上に寄与し、国内の経済維持・発展に重要」と提唱されています。

なお、ウェルビーイングには、エンゲージメントやハピネスなど似た言葉が複数あります。

以下の記事でウェルビーイングと似た言葉の一覧を解説していますので、意味の違いを正しく理解したい方は、ご一読ください。

ウェルビーイングとは?意味と指標・取り組み事例や測定方法まで解説

ウェルビーイングとは、心理的、社会的、身体的に満たされた状態のことです。本記事では、ウェルビーイングの意味や指標、高め方のポイントや診断ツールまで詳しく解説します。

記事掲載日:2024年9月2日

ウェルビーイング経営には、以下の効果が期待されています。

▼ウェルビーイング経営が企業にもたらす効果
・離職防止
・生産性向上
・人材確保
・従業員エンゲージメントの向上

なかでも従業員エンゲージメントの向上は、優秀な人材の確保につながるため、少子高齢化による人材不足の有効な対策といえます。以下の記事でその理由を詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

従業員エンゲージメントとは?向上施策や導入事例・測定方法を解説

従業員エンゲージメントとは、従業員が持つ貢献意欲や愛着のことです。本記事では、従業員エンゲージメントの概要や向上施策、導入事例や測定方法まで詳しく解説します。

記事掲載日:2024年9月25日

実際の研究でも、人が幸せな状態で仕事をした場合「生産性が31%アップ、売り上げが37%アップ、創造性が3倍」になる効果が発表されています。

【ウェルビーイング経営の効果】

参考:The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?

こうした効果から、国内のさまざまな企業でウェルビーイング経営に取り組んでいます。

従業員のウェルビーイングを高めるポイントには「良いコミュニケーションを取る」「健康を推進する」などが挙げられます。その他のポイントは以下で解説していますので、ご確認ください。

ウェルビーイング経営で会社が変わる!3つのメリットや成功事例を紹介

ウェルビーイングを会社に導入すると、生産性向上だけでなく離職率低下も期待できます。本記事では、ウェルビーイング経営の3つのメリット成功事例、ポイントなどを解説します。

記事掲載日:2024年4月7日

ウェルビーイング経営の取り組み事例9選【心理・社会・身体別】

ここでは、ウェルビーイング経営に取り組んでいる企業の事例を、ウェルビーイングの3つの要素「心理的」「社会的」「身体的」に分けて9つ紹介します。まずは自社のウェルビーイングの現状を把握し、従業員やクライアントの課題となっている側面を特定することが大切です。

各側面での具体的な取り組みを知り施策のヒントを得て、自社の施策に活かしてください。

  1. 【心理的】事例1. ソフィアメディ株式会社
  2. 【心理的】事例2. 西川株式会社
  3. 【心理的】事例3. 日本電信電話株式会社
  4. 【社会的】事例4. 兼松株式会社
  5. 【社会的】事例5. 株式会社ブリヂストン
  6. 【社会的】事例6. ソフトバンク株式会社
  7. 【身体的】事例7. 株式会社PHONE APPLI
  8. 【身体的】事例8. キリンホールディングス株式会社
  9. 【身体的】事例9. サントリー食品インターナショナル株式会社

【心理的】事例1. ソフィアメディ株式会社

出典:ソフィアメディ株式会社

ソフィアメディ株式会社は、訪問看護事業を展開しています。

同社では、24時間365日体制などで「身体的・精神的な負担が高い」といった課題がありました。「事業と従業員が成長し続けるには、従業員同士の信頼関係や働きがい、定着率の向上が重要」ととらえ、対策として次のウェルビーイング向上施策をおこないました。

▼心理的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・パルスサーベイの導入:月に1回、簡単な質問で従業員の精神的健康状態を把握し、問題があれば早期に面談など対策を講じる仕組みを導入
・Great Place To Work調査の実施:年に1回、職場全体の健康状態を把握し、改善策を検討。結果を「職場カルテ」としてフィードバックし、管理者が対策を講じる

▼その他の取り組み
・ウェルビーイング推進グループの設置:全社的にウェルビーイング向上に取り組むため、バックオフィスに専門のグループを設置
・新人研修の強化:1年以内に離職しやすい新入社員に対し、定着支援を強化

取り組みの結果、以下の成果がありました。

▼取り組みの成果
・離職率の低下:パルスサーベイと面談の実施により、離職の兆候を察知したことで事前相談のない離職者は減少傾向
・コミュニケーション活性化による不満軽減:社内のコミュニケーションが促進され、業務に対する不満の声が軽減し、前向きな声や意見表明などに変化/p>

パルスサーベイや健康状態のフィードバックをおこなうことで、従業員からの意見や相談が増え、コミュニケーション活性化につながった事例といえます。

参考:取組事例(ソフィアメディ株式会社)|厚生労働省

【心理的】事例2. 西川株式会社

出典:西川株式会社

西川株式会社は、寝具やタオルなど繊維製品の製造や加工を提供している企業です。

同社では、コロナ禍にともないメンタルヘルスが不調な従業員が増加していたため、予防策の実施や労働環境の改善が課題でした。実施した施策は以下です。

▼心理的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・ストレスチェックの実施:全従業員にストレスチェックを定期的に実施し、メンタルヘルス不調の予防に取り組む
・仮眠ルームの活用を推奨:仮眠ルームを導入し、集中力を高めたいときなどに仮眠を推奨

▼その他の取り組み
・禁煙の推進:全オフィス内の喫煙室を廃止。禁煙外来を希望する従業員には医療費の一部補助で禁煙を促進

施策の成果は次のとおりです。

▼取り組みの成果
・高ストレス者の減少:ストレスチェックの導入により、高ストレス者の割合が減少(2020年の17.3%から2021年の13.7%へ減少)
・仮眠ルームでストレス軽減やリラックス効果:従業員の約90%がストレスや眠気の軽減を実感。集中力や作業効率の向上とリラックス効果につながった
・喫煙率の改善:禁煙施策により、従業員の喫煙率が2019年の25.6%から2020年23%に減少

従業員のメンタルヘルスや健康を重視した施策により、ストレスの軽減や喫煙率の改善を達成した好例といえるでしょう。

参考:「2023 健康経営 先進企業事例集」13ページより|健康長寿産業連合会

【心理的】事例3. 日本電信電話株式会社

出典:日本電信電話株式会社

日本電信電話株式会社(NTT)は、携帯電話事業やソリューション事業などを提供しています。

同社では、2014年から2017年にかけてメンタルヘルス休職者が増加していることや、リモートワークによる従業員の運動不足が課題でした。休職者の減少や運動不足の解消を目指し、以下の施策を実施しました。

▼心理的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・パルスサーベイの導入:簡易・定期的なパルスサーベイを実施しメンタル不調者の早期発見・改善に努める
・健康情報(HDB)のセルフチェック環境を提供:従業員が心身の健康情報を管理し、自身でセルフチェックができる環境を構築

▼その他の取り組み
・運動習慣の促進:運動習慣の定着を図るため、健康課題(ミッション)を配信し、達成に応じてインセンティブ(dポイント付与)を付与するサービスを活用

施策に取り組んだ結果は次のとおりです。

▼取り組みの成果
・メンタルヘルス休職者の発生率低下:2018年の0.83%から2021年には0.40%に減少
・運動習慣者の増加:運動習慣者の割合は2017年の15.8%から2021年度には23.9%まで増加

メンタルヘルス不調者の早期発見や運動習慣の促進に取り組み、従業員の心身の健康向上に成功した事例といえます。

参考:「2023 健康経営 先進企業事例集」14ページより|健康長寿産業連合会

【社会的】事例4. 兼松株式会社

出典:兼松株式会社

兼松株式会社は国内外のネットワークを活かし、ICTソリューションや電子関連の素材・部品などを提供しています。同社では、フレックスタイム制を従業員が活用できていないことや「年次有給休暇が取りにくい」という声が挙がるなどの課題があり、以下の施策に取り組みました。

▼社会的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・フレックスタイム制度の導入:個人単位での柔軟な勤務が可能な「フルフレックス制度」を導入し、多様な働き方を促進
・テレワークの推進:週2日までのテレワークを許可し、在宅勤務の機会を増加
年次有給休暇取得の推進:「ブロンズウィーク・プラス」という通常の週末に連続して設定できる休暇制度を導入。従業員が自由に休暇を設定できる環境を整備

▼その他の取り組み
・育児支援:出生翌日から8週間までの特別有給休暇を付与する「ハローベビー休暇」を導入し、男性の育児参加を促進

取り組みの結果は以下のとおりです。

▼取り組みの成果
・従業員エンゲージメントが向上:3年前よりエンゲージメントが5ポイント向上
・フレックスタイム制度の活用率が向上:制度導入後、従業員の約8割がフルフレックス制度を利用し、働き方の自由度が高まった

同社の事例から、働き方の柔軟性を高めることは、従業員のエンゲージメントやワークライフバランスの向上に効果的だとわかります。

参考:取組事例(兼松株式会社)|厚生労働省

【社会的】事例5. 株式会社ブリヂストン

出典:株式会社ブリヂストン

株式会社ブリヂストンは、タイヤの製造・販売やソリューション事業を提供する企業です。

同社では、一人ひとりの仕事の質向上による企業競争力の向上と、従業員個人の成長を目指す「働き方変革」を掲げ、従業員の声や多様な働き方を尊重する施策に取り組みました。

▼社会的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・オフィスカジュアルの導入:従業員の提案より、服装を自由に選べる制度を導入
・労働時間削減の取り組み:スタッフ部門の所定労働時間を8時間から7時間30分に短縮し、所定外労働を削減
・多様な働き方の推進:テレワーク制度の拡充で、柔軟に働ける環境を整備

▼その他の取り組み
・オフィス環境の整備:食堂のリニューアルや会議室の最適な設計など、仕事の質や効率の向上につながるよう社内環境を整備
・ダイバーシティの推進:LGBTに関する研修や講演会、女性活躍の促進に関する講演会を10年前から実施

上記の取り組みにより、以下の成果につながりました。

▼取り組みの成果
・服装の自由によるコミュニケーションへのプラスの効果:作業効率向上や従業員間のコミュニケーションに好影響
・テレワーク利用者の増加:2016年の83人から2018年には1,276人に増加し、多様な働き方が実現

従業員の声や多様な働き方を尊重した施策で、従業員同士のコミュニケーション活性化や作業効率向上を実現した事例といえます。

参考:取組事例(株式会社ブリヂストン)|厚生労働省

【社会的】事例6. ソフトバンク株式会社

出典:ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、個人・法人への携帯端末の販売やモバイルサービスの提供など通信業を展開する企業です。

同社では、通信業界の競争力を高めるために、新規事業の創出や既存事業の活性化の必要性が高まっていました。こうした課題に対処するため、イノベーション創出の一環として、従業員の多様な働き方や社外での交流を促進する以下の取り組みをおこないました。

▼社会的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・副業・兼業の推進:本業に支障をきたさない範囲の副業を承認・推進することで、従業員が獲得したスキルや経験を本業にも活かし、イノベーション創出を目指す
・Workstyle支援金の支給:従業員が出社、在宅勤務、サテライトオフィス勤務を自由に選択できる柔軟な働き方を支援するため、毎月4千円の支援金を提供
・スーパーフレックスタイム制:業務に応じて勤務時間を選べる制度を導入

▼その他の取り組み
・自己成長支援金の支給:従業員の自己啓発や能力開発の奨励を目的に、毎月1万円を支給

施策に取り組んだ結果、次の成果につながりました。

▼取り組みの成果
・生産性やイノベーション創出効果を実感:アンケートにて、従業員の約7割が業務の生産性や仕事でのイノベーション発揮が向上したと回答

副業や社外との交流を推進する施策で、従業員の生産性やイノベーション創出につながることがわかる事例といえます。

参考:「スマートワークスタイルの推進」企業・IR|ソフトバンク株式会社

【身体的】事例7. 株式会社PHONE APPLI

出典:株式会社PHONE APPLI

株式会社PHONE APPLIは、クラウドサービスやアプリケーションの企画・開発をおこなう情報通信業を展開しています。

ウェルビーイング経営をおこない健康経営優良法人の認定を目指す同社では、女性特有の健康課題への支援が不足していることに着目しました。そこで現状やニーズを把握するために、生理休暇取得についてのアンケートを実施して、以下の取り組みをおこないました。

▼身体的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・生理休暇の有給化:1ヵ月につき1日、生理時の体調不良や不妊治療、更年期障害などで利用できる有給休暇「YOU休」を導入
・研修と説明会の実施:上記の「YOU休」制度導入にあたり、制度の説明や研修を実施し、従業員の理解促進と制度の浸透を図る

▼その他の取り組み
・ウェルビーイング経営のビジョンの設定:「皆が生き生きと幸せに働き、お客様の成功に尽力できる企業になる」というビジョンを掲げている
・毎月サーベイを実施:サーベイで従業員の状態の変化を見ながら、制度の見直しなどを定期的に実施

取り組み後、以下の成果につながりました。

▼取り組みの成果
・制度の浸透と利用増加:制度導入後、女性従業員の約1~2割(15人程度)が毎月「YOU休」を利用
・従業員のストレス軽減:安心して休暇を取得できる環境が整い、ストレスの軽減に貢献
・採用時のアピールポイント:採用活動の際に「YOU休」の存在が会社の配慮としてアピールし、企業イメージを強化

同社の事例から、従業員へのアンケートやサーベイの実施により、ニーズを反映した制度の導入や定期的な見直しがおこなわれたことで、ストレス軽減や企業イメージの強化に効果があったといえます。

参考:株式会社PHONE APPLI
参考:株式会社PHONE APPLI|厚生労働省

【身体的】事例8. キリンホールディングス株式会社

出典:キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、国内外で飲料や食品の製造・開発などをメインに展開している企業です。同社では、従業員一人ひとりが健康に働き、安全な環境で高いパフォーマンスを発揮できる状態を実現するために、次の施策に取り組みました。

▼身体的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・飲酒習慣スクリーニングテスト(AUDIT)の実施:飲酒習慣のセルフチェックができる専用ツールを導入し、従業員の飲酒習慣を管理
・プレゼンティーズム(疾病出勤)とストレスチェックの実施:専用ツールにて従業員のプレゼンティーズムとストレス状態を測定し、コンサルタントより組織の分析結果のフィードバックを受ける

▼その他の取り組み
・ESGへの取り組み:健康経営を推進の様子を社外へ開示をおこない、企業価値を高めている

上記の施策によって、以下の成果がありました。

▼取り組みの成果
・飲酒習慣の改善:AUDITで10点未満(適正な飲酒者に該当)の割合が、2020年の83.1%から2021年には84.6%に増加
・組織分析で不調を改善:コンサルタントよりフィードバックと個別報告会を実施し、課題に対応したところ「いきいき度」が2019年112から2022年115に改善

従業員の飲酒習慣の改善や組織分析を通じて心身の不調を改善し、組織全体の健康意識を向上させた事例といえます。

参考:「2023 健康経営 先進企業事例集」8ページより|健康長寿産業連合会

【身体的】事例9. サントリー食品インターナショナル株式会社

出典:サントリーホールディングス株式会社

サントリー食品インターナショナル株式会社は、飲料や食品の製造・販売事業をおこなっています。同社では、習慣的に運動をしている従業員が全体の約5割(51.9%)と少ないことに注目し、運動習慣を促進する以下の施策を実施しました。

▼身体的ウェルビーイング向上の取り組みの例
・運動習慣の定着促進:「Activeプラス10宣言」活動を全従業員に実施し、1日10分の運動習慣を呼びかけと、体力測定や運動アドバイスを提供
・健康リテラシーの向上:体力・体組成測定を定期的に実施し、全国で運動に関するアドバイスをおこなう
・体力年齢測定:全国の拠点で体力年齢測定会を実施し、従業員が自身の体力を理解し、改善に向けた行動を促進

取り組み後、以下の結果に結びつきました。

▼取り組みの成果
運動習慣の定着:Activeプラス10宣言参加者の59.8%が週2回以上の運動を継続、13.8%が毎日運動を実施

運動習慣の定着を促進する積極的な取り組みで、従業員の継続的な運動習慣づくりや健康への関心を高めることに成功させた事例といえます。

参考:「2024 健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」7ページより
参考:「サントリー健康白書 2023」8ページより

ウェルビーイング経営の具体的な3つの施策【心理・社会・身体別】

ウェルビーイング経営の施策は、まず自社の抱える課題を把握し、従業員の「心理的」「社会的」「身体的」な3つの面にアプローチをすることがカギです。

ここでは、先述した9つの成功事例をふまえて、企業が実施できる具体的な施策を3つの面からご紹介します。

  1. 心理的ウェルビーイングを高める施策
  2. 社会的ウェルビーイングを高める施策
  3. 身体的ウェルビーイングを高める施策

経営者や人事担当者はもちろん、企業をサポートする対人支援者にもヒントとなる内容なので、ぜひチェックしてください。

心理的ウェルビーイングを高める施策

心理的ウェルビーイングを向上させる施策例として、以下の取り組みが挙げられます。

  • メンタルヘルス対策
  • コーチングの導入

企業のメンタルヘルス対策は、産業医やカウンセラーなどの専門家によるカウンセリングや、従業員が気軽に相談できる窓口の設置などが挙げられます。ストレスチェックや社内アンケートを活用して、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見し、迅速に対応するフローの整備も効果的です。

▼メンタルヘルス対策の一例
・ストレスチェックの活用
・個別相談窓口の設置
・メンタルケアに関する社内研修の開催
・医療機関や外部の専門サービスとの連携による対策強化 など

また、認知行動療法の1つであるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の活用も、心理的ウェルビーイングの向上につながります。ACTとは「人間の心理的な苦痛や問題を受け入れ、否定しない」ことを基本とする考え方です。

ウェルビーイングを高める働き方には「自分の価値観に基づいて行動すること」が重要とされており、ACTはそれを後押しします。ACTの詳しい仕組みや仕事での活用方法は以下で解説していますので、ぜひご覧ください。

【セミナーレポート】心理的ウェルビーイング向上のための支援:ACTとコーチング入門

2024年5月14日、「心理的ウェルビーイング向上のための支援: ACTとコーチング入門」が開催されました。ACTのエクササイズやコーチングとウェルビーイングの関係などについて解説しています。

記事掲載日:2024年7月2日

さらに、社内にコーチングを導入することも心理的ウェルビーイング向上に有効です。コーチによる問いかけやフィードバックを通じて、従業員は自己認識が高まります。

【コーチングとウェルビーイングの関係を示した図】

自己認識とは、自分の思考や価値観、他者からの評価など「自分を客観的に理解する力」です。コーチングで自己認識が深まると、従業員の主体性や行動力が高まり、自己成長や目標達成につながることで、企業全体の生産性向上や発展にも貢献します。

コーチングで自己認識が高まる詳しい仕組みやコーチングの実施ポイント、コーチングを導入する手順は以下で解説していますので、併せてご一読ください。

コーチングでウェルビーイングを高める!効果と実施ポイントを解説

コーチングはウェルビーイングの向上効果があります。本記事では、対人支援者向けに、コーチングとウェルビーイングの関係や効果、導入手順とポイント、効果を可視化する診断ツールを紹介します。

記事掲載日:2024年7月2日

社会的ウェルビーイングを高める施策

社会的ウェルビーイングを向上させる施策例には、次の取り組みがあります。

  • ウェルビーイング経営の施策の目的・目標を明確化
  • 柔軟な働き方が可能な勤務体制の導入

ウェルビーイング施策を効果的に進めるには、従業員が施策の目的や目標をしっかりと理解し、共通の意識を持つことが重要です。ウェルビーイング経営の施策内容を明確に言語化し、朝礼や社内報などを通じて従業員と目標を共有しましょう。

▼「メンタルヘルス対策の強化」が目的の場合の目標例
・復職・休職者を〇%軽減
・社内の残業率を〇%削減 など

目標を共有することで社内に一体感が生まれ、従業員が施策に積極的に参加しやすくなります。施策の進捗を定量的に確認・分析し、従業員にフィードバックを共有することも、社内に一体感を生むために大切です。

また柔軟な働き方を可能にする勤務体制の導入も、ウェルビーイングの向上につながります。実際に研究でも「働く場所の柔軟性が高いと、ウェルビーイング度の平均値も高い」と発表されています。

参考:働く場所の柔軟な選択とウェルビーイング度の関係性の研究

▼柔軟な働き方の例
・テレワークの導入
・フレックスタイム(時差出勤)制度を導入
・副業の推進 など

例えば、週に1~2回のテレワークを導入することで、従業員は家庭とのつながりを維持しながら働けるため、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなります。

また、副業やボランティアなど社外活動を奨励し、従業員の新たなスキル取得や活躍の場を後押しする取り組みも有効です。従業員の自己実現の機会を増やし、社会的なつながりが深まることから、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。

身体的ウェルビーイングを高める施策

従業員の身体的ウェルビーイングを向上させる施策として、以下の取り組みが挙げられます。

  • 健康に関する研修・セミナーの開催
  • 快適なオフィス環境づくり

定期的に健康に関する研修やセミナーを開催することで従業員の健康意識を高め、健康習慣のきっかけを提供できます。

▼健康に関する研修・セミナーのテーマ例
・栄養士による食事管理と生活習慣病予防
・医師による睡眠環境を整える方法
・集中力を維持するための簡単なストレッチの実技講習 など

こうした取り組みは、従業員の健康意識を高め、パフォーマンス向上や休職率の低下といった効果も期待できます。効果的な研修やセミナーを開催するには、従業員のライフスタイルや業種による特徴、自社の課題を考慮し、従業員が生活で実践できるような研修内容を選ぶことが重要です。

ビジネスパーソンが関心をひく内容を盛り込んだ研修であれば、従業員が取り組みやすく健康習慣づくりを促進できます。

以下は、ウェルビーイングと快眠に関するセミナーの記事化です。睡眠の質を高める生活習慣の工夫や、睡眠に関するよくある質問に専門家が答える内容を提供しています。効果的な社内研修やセミナーのヒントを得たい方は、ぜひ以下をご覧ください。

【ビジネスパーソン向け】健康とウェルビーイングを促す快眠術とは?

2024年8月6日、「ビジネスパーソン向け 健康とウェルビーイングを促す睡眠術とは?」が開催されました。ウェルビーイングを高める要素の一つである睡眠の改善を促す生活習慣上の工夫などについて解説しています。

記事掲載日:2024年9月25日

またオフィス環境の整備も、身体的ウェルビーイングの向上につながります。

▼快適なオフィス環境づくりの例
・適温を保つ空調設備の設置
・体に負担をかけない机や椅子の導入
・静かな環境で休める仮眠室の設置 など

社内でアンケートを実施し、従業員の要望やニーズを反映した環境改善をおこなうことも一案です。

上記の施策以外にも、以下の記事ではウェルビーイング施策の具体例や実践ポイントを解説しています。施策のヒントを得たい方は、併せてご覧ください。

ウェルビーイングの高め方とポイント・診断ツールを紹介【コーチ向け】

ウェルビーイングを高める方法を解説。企業・個人・対人支援者別にウェルビーイングを向上させる具体的な方法と持続させるポイント、ウェルビーイングを可視化するおすすめ診断ツールを紹介します。

記事掲載日:2024年7月30日

ウェルビーイング経営を成功させる2つの重要ポイント

ウェルビーイング経営を成功させるためには、施策後の改善が重要です。ここでは、ウェルビーイング経営を効果的に進めるためのポイントを2つ解説します。

  1. ポイント1. 指標やツールを活用し、状態を定量化する
  2. ポイント2. 取り組みの効果や変化を記録・分析する

ウェルビーイングは概念のため「施策の効果や変化が見えにくい」という課題がありますので、その対処法も紹介します。

ポイント1. 指標やツールを活用し、状態を定量化する

ウェルビーイング経営を成功させるには、従業員の現状把握が欠かせません。ウェルビーイング指標や専用ツールを活用して、ウェルビーイングの状態を定量化し、施策の効果を正確に測定しましょう。

ウェルビーイング指標とは「個人や組織の幸福や満足度などを測る物差し」です。代表的なウェルビーイング指標として、以下の5つが挙げられます。

  1. ​​PERMAモデル
  2. ギャラップ社による指標
  3. 世界幸福度ランキング
  4. 地域幸福度指標
  5. OECDの指標

こうした指標の活用することで「他者との関係が良好」「達成感を高く感じている」など、従業員のウェルビーイングを把握するヒントを得られます。各指標の意味や活用方法は、以下で解説していますので、併せてご覧ください。

ウェルビーイング指標とは?5つの測定方法の特徴と活用法を解説

ウェルビーイング指標とは、幸せ度合いを測る尺度のことで、個性を活かすために使用します。本記事では指標の種類や測定方法・目的に合わせた活用方法などを解説しています。

記事掲載日:2024年4月30日

なお、従業員が多い企業や、効率良くウェルビーイングの状態を把握したい場合は、ウェルビーイングを測定する専用ツールの活用がおすすめです。精度の高い測定や分析時間の短縮につながり、従業員のウェルビーイングを効率的に把握できます。

例えば、早稲田大学 人間科学学術院の大月教授が監修するメタメンターの「ウェルビーイング診断」は、心理的・社会的・身体的の3側面からウェルビーイングの可視化が可能です。

【メタメンターのウェルビーイング診断の結果画面】

ウェルビーイングを構成する3側面の状態を「A+〜C-」の9段階で定量化するため、「どの要素を改善すればいいのか?」が直感的に理解できます。

【ウェルビーイングの変化を可視化】

学術的な根拠に基づいたツールのため信頼性が高く、診断は約5分で簡単におこなえるのが特徴です。精度を確かめたい方は、以下よりお試しください。

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ウェルビーイング診断はこちら

ウェルビーイング診断の特徴は、以下の動画で解説していますので、詳細を知りたい方はご覧ください。

なお、効果的なウェルビーイング診断ツールを選ぶ際は、「計測の範囲」「信頼性と妥当性」「対象者」に着目することがポイントです。以下の記事でその理由と活用方法を紹介しています。

ウェルビーイング診断ツールおすすめ5選!選び方や有効的な活用方法も解説

ウェルビーイング診断は、簡単な質問に答えるだけでウェルビーイングの状態がわかるツールです。本記事では、おすすめの診断ツールや選び方・有効的な活用方法などを解説しています。

記事掲載日:2024年5月29日

ポイント2. 取り組みの効果や変化を記録・分析する

効果的なウェルビーイング経営の施策を講じるには、施策の実施後に効果や従業員の変化を記録し、定期的に分析することが重要です。取り組み前後のデータを比較することで、どの施策が効果的だったかを判断でき、次の施策に役立てられます。

例えば、定期的にアンケートを実施したり、従業員との面談をおこなったりして、従業員が感じた変化の収集が有効です。ただし、従業員が多い企業は、データの管理や分析が複雑になる可能性があります。その際には、ウェルビーイングを測定するツールの活用がおすすめです。

例えば、メタメンターのウェルビーイング診断では、ウェルビーイングの変化を可視化できるため、施策後の変化が一目でわかります。また、受検履歴も自動的に記録されるため、データ管理が効率化されます。

【クライアントのウェルビーイングの変化を把握できる】

こうした専用ツールを活用することで、従業員のウェルビーイングの変化が把握でき、効果的な施策の分析・改善が可能です。ウェルビーイング診断は無料で試せますので、ぜひご自身のウェルビーイングの変化を確認してみてください。

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まとめ:ウェルビーイング経営の取り組み成功のカギは効果測定

本記事では、ウェルビーイング経営の取り組み事例を9つ紹介し、心理的・社会的・身体的の3つの側面から、具体的な施策と成功させるポイントを解説しました。

ウェルビーイング経営とは、従業員の心身の幸福を重視し、企業全体のパフォーマンス向上を目指す経営手法です。ウェルビーイングの向上施策を成功させるには、心理的・社会的・身体的の3つの要素を取り入れ、従業員の現状を把握したうえで実施することが重要です。まずは自社の現状を確認し、課題に応じた施策を講じましょう。

また、ウェルビーイング施策の効果を高めるには、現状を定量化し、変化を記録・分析することが必要です。ウェルビーイングの状態を把握し、施策の改善に役立てたい方は、無料で使用できるメタメンターのウェルビーイング診断をぜひお試しください。

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記事監修

代表取締役社長 小泉 領雄南

2011年にGMOペイメントゲートウェイ入社。2016年にGMOフィナンシャルゲート執行役員に就任し、2020年に上場。2021年、早稲田MBA在学中にコーチングに出会い、翌年メタメンター設立。2023年に国際コーチング連盟日本支部運営委員に就任。

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