WELLBEING MAGAZINE

【論文まとめ】人生満足度尺度

アカデミア

記事掲載日:2024年6月6日 
最終更新日:2024年7月2日

こんにちは、メタメンターのウェルビーイングに関する研究論文を読んで、ウェルビーイングについて学術的に深く理解していこうという企画第三弾です。

本論文は、**人生満足度尺度(Satisfaction With Life Scale, SWLS)**の開発と検証について詳細に述べています。SWLSは、個人の全体的な人生満足度を測定するために設計された評価ツールです。

Ed Dienerらが1985年に発表したこの尺度は、高い内部一貫性と時間的信頼性を持ち、他の主観的幸福感尺度や特定の性格特性とも強い関連性を示しています。研究は三つのスタディを通じておこなわれ、各スタディで異なる年齢層や状況におけるSWLSの有効性が確認されました。

この論文は、政策立案者や研究者にとって、個人のウェルビーイングを評価するための有力なツールとして重要な示唆を提供します。SWLSの詳細な開発プロセスとその検証結果は、今後の社会政策の改善や幸福感に関する研究において非常に有用です。興味が湧いたらぜひ原著も読んでみてください。

概要まとめ

イントロダクション

  • 「人生満足度尺度(SWLS)」は、個人の全体的な人生満足度を測定するために開発された
  • 主観的幸福感の一部であるが、ポジティブな感情やネガティブな感情とは異なる
  • SWLSは、各個人が自分の基準に基づいて評価をおこなう

研究内容

  • SWLSの開発と検証を三つのスタディでおこなう
  • スタディ1では、イリノイ大学の学生を対象に、48の初期項目から5項目に絞り込む。内部一貫性と時間的信頼性を確認
  • スタディ2では、SWLSと他の幸福感尺度や性格特性との相関を調査。高い関連性を示す
  • スタディ3では、高齢者を対象にSWLSの信頼性と妥当性を検証。異なる年齢層での適用可能性を確認

結論

  • SWLSは、人生満足度を評価する有効なツール
  • 高い信頼性と妥当性を持つ
  • 他の幸福感尺度や性格特性と高い関連性があり、異なる年齢層でも適用可能
  • 今後は、感情と人生満足度の関係をさらに探求する必要がある

▼信頼性と妥当性に関する解説はこちら
https://metamentor.tech/magazine/wellbeing-assesment/#2

イントロダクション

近年、主観的幸福感の研究が増加しており、その中でポジティブな感情、ネガティブな感情、そして人生満足度という三つの主要な要素が特定されています。この研究の焦点は、人生満足度という認知的・判断的側面を測定する尺度の開発です。

ShinとJohnson(1978)は、人生満足度を「個人が選んだ基準に基づいた人生の質の全体的な評価」と定義しています。既存の尺度の多くは、単一項目で構成されているか、高齢者向けに設計されているため、全体的な人生満足度を多項目で測定する新しい尺度の必要性がありました。本研究では、そのような尺度としてSWLSを開発し、その心理測定特性を検証することを目的としています。

研究内容

この論文では、人生満足度尺度(Satisfaction With Life Scale, SWLS)の開発とその心理測定特性を検証するために、三つの主要なスタディがおこなわれました。

スタディ1: SWLSの構築と初期検証

まず、SWLSの構築は、初期段階で生成された48の自己報告項目から始まりました。これらの項目は、主に人生に対する満足度に関連する質問で構成されており、一部はポジティブおよびネガティブな感情項目も含まれていました。

初期の因子分析により、ポジティブ感情、ネガティブ感情、満足度の三つの因子が特定されました。感情項目を除外し、満足度因子の項目の中で因子負荷量が0.60未満のものを削除することで、最終的に5項目が選定されました。これがSWLSの基本構成となりました。

SWLSの心理測定特性を検証するため、イリノイ大学の176名の学部生が対象となりました。SWLSはグループ設定で実施され、2ヶ月後に再度76名の学生に対して再テストがおこなわれました。その結果、SWLSの平均スコアは23.5(標準偏差6.43)であり、再テストの相関係数は0.82、クロンバックのアルファ係数は0.87という高い信頼性が確認されました。

スタディ2: SWLSと他の主観的幸福感尺度および性格特性との関連

スタディ2では、異なる二つのサンプルを用いて、SWLSと他の主観的幸福感尺度および性格特性との関連を調査しました。サンプル1はスタディ1で使用した176名の学生、サンプル2は新たに選定された163名の学生です。

これらの学生には、Cantrilの自己定位ラダー、Gurinらの項目、AndrewsとWitheyのD-Tスケール、Fordyceの幸福感単一項目尺度、Bradburnの感情バランススケール、Tellegenの差異人格質問票、Rosenbergの自尊感情尺度、Eysenckの人格目録、Hopkins症状チェックリストなど、複数の主観的幸福感および性格特性のバッテリーが実施されました。

その結果、SWLSは他の主観的幸福感尺度と中程度から高い相関を示しました(例: 自尊感情との相関0.54、神経症傾向との相関-0.48)。これにより、SWLSが主観的幸福感の有効な指標であることが確認されました。

スタディ3: 高齢者に対するSWLSの適用

スタディ3では、高齢者を対象にSWLSの適用とその妥当性を検証しました。53名の高齢者(平均年齢75歳)が対象となり、看護ホーム入所者、自宅待機者、ビジネスマンのグループ、宗教活動をおこなう女性のグループに分かれて参加しました。

これらの被験者には、SWLSとともに、Adams(1969)の改訂版人生満足度指数(LSI)が実施されました。また、訓練を受けた面接者による1時間のインタビューがおこなわれ、被験者の全体的な人生満足度が評価されました。

その結果、SWLSは面接者の評価と0.43の相関を示し、高齢者においても有効であることが確認されました。また、SWLSの内部一貫性も高く、項目間の相関係数が良好でした。

以上のスタディを通じて、SWLSは異なる年齢層や状況においても高い信頼性と妥当性を持つことが示されました。

結論

本研究は、人生満足度を多項目で測定するSWLSの開発と検証に成功しました。SWLSは高い内部一貫性と時間的信頼性を持ち、他の主観的幸福感の尺度や特定の性格特性とも予測可能な相関を示しています。

特に、SWLSは個人の全体的な人生満足度を認知的・判断的に評価するための有用なツールであり、異なる年齢層でも使用可能です。

今後の研究では、SWLSの識別妥当性の確立や感情と人生満足度の関係、人生満足度と特定の生活領域の満足度との関連をさらに探求する必要があります。SWLSは、個人が重要と考える基準に基づいて自己評価をおこなうことを可能にするため、幅広い応用が期待されます。

参考文献

Diener, E., Emmons, R. A., Larsen, R. J., & Griffin, S. (1985). The Satisfaction With Life Scale. Journal of Personality Assessment, 49(1), 71-75.

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記事監修

WELLBEING MAGAZINE編集部

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