WELLBEING MAGAZINE

【ビジネスパーソン向け】健康とウェルビーイングを促す快眠術とは?

アカデミア

記事掲載日:2024年9月25日 
最終更新日:2024年10月25日

株式会社メタメンターは、デジタルコーチングシステムの一つとして「ウェルビーイング診断」に続き、日本で初めてのクライアント管理ツール「MetaMentor CRM 」の提供を9月からスタートしました。

2024年8月6日に、広島大学大学院人間社会科学研究科睡眠行動医学研究の田村准教授(臨床心理士・公認心理師)をお招きして、有料級のセミナーを無料で公開しました。

当日のアジェンダは大きく次のとおりです。(一部セミナー時とは順番を変えております)

  1. 働き世代に起きやすい眠りの問題
  2. パフォーマンス向上のカギは眠りにあり
  3. 睡眠の質・量の改善を促す生活習慣上の工夫
  4. 借金のように膨らむ睡眠負債
  5. 朝・昼・夜の時間帯別の覚醒度コントロール術
  6. 質疑応答

【スピーカー】

【株式会社メタメンター】
設立2022年6月10日
デジタルコーチングシステムの提供・人事・組織向けDXシステム開発・オウンドメディア運営などをおこなっている

オープニング

当セミナーを主催する株式会社メタメンターでは、心理・社会・身体のウェルビーイングを総合的に可視化できるツール「ウェルビーイング診断」を提供しています。

ウェルビーイングとは、「心理的・身体的・社会的に満たされた状態」のことです。「ウェルビーイング診断」では、心理面だけでなく、睡眠と深い関係のある「身体的面」でのウェルビーイングの指数も測定できます。

【ウェルビーイング診断の実際の画面】

サービスをリリースしてから、睡眠習慣に課題を感じている人が多いことがわかりました。ウェルビーイングを向上させるうえで「睡眠」は欠かせない要素の一つです。

睡眠は心身の健康や機能に直接的な影響を与えるため、良質な睡眠がとれている状態は、ウェルビーイングの促進につながります。そのため、対人支援者としてコーチやカウンセリングに携わっている人・ユーザーの両者が、「睡眠を正しく理解する」ことは、ウェルビーイング向上においても大切です。

そこで今回のセミナーでは、「健康とウェルビーイングを促進する快眠術」というテーマで具体的な快眠術についてご紹介します。

今回、セミナーに参加された方に参加の目的を尋ねてみました。

【セミナーに参加された方の目的】
・日中のパフォーマンスを上げたい
・良い睡眠というものを知りたい
・更年期以降入眠剤を使用している
・睡眠行動医学に関心がある
・睡眠の質を上げるスキルを上げたい
・フィットビットの睡眠スコアが低いのが気になる
・睡眠とウェルビーイングの関係が知りたい
・まともに眠れなくなったことがあり、学びたい

目的意識を持って参加していただくことで、課題解決へのヒントが得られますので今後の活動にお役立てください。

健康とウェルビーイングを促す快眠術とは?

私たちの心身の健康に欠かせない質の高い睡眠は、ウェルビーイングにつながる大切な要素の一つです。ウェルビーイングとは、「心理的・社会的・身体的」に満たされた状態をいいます。

しかし、厚生労働省が出している令和元年国民健康・栄養調査では、睡眠不足にあたる6時間未満の方は、日本人の約4割に及ぶことがわかりました。

【1日の平均睡眠時間】

男女別では、男性が約4割・女性は4割を超える方が睡眠不足の状態です。世界的に見ても日本人は「睡眠時間が少ない」ことがわかります。

出典:内閣府「睡眠時間の国際比較」

働き世代に起きやすい眠りの問題

実は、年齢によって睡眠の「量」が問題になる場合と、「質」が問題になる層には違いがあります。

【世代別睡眠の問題】

年代 実態 課題
30〜50代の働き世代
と呼ばれる層
単に睡眠時間が短い 睡眠の量
熟年世代と呼ばれる層 不眠症や途中で目が覚めるなど 睡眠の質

働き世代と呼ばれる30〜50代は、睡眠の量が不足傾向にあり、熟年世代と呼ばれる層は睡眠の質に課題があるため、取り組むべき対策が異なります。

パフォーマンスのカギは眠りにあり

下記は、睡眠とパフォーマンス向上の関係性を「高校生の学業成績」という側面から調べた調査結果です。

寝る時間が遅いと、成績も落ちていくのがわかります。特に注目すべきは右側「学業成績」のグラフです。

成績が「平均よりかなり高い」子の就寝時間約23時半と、成績が「平均よりかなり低い」子の就寝時間約23時45分の差はたった15分しかありません。

15分の就寝時間の差は1日なら問題ありませんが、日にちを重ねるうちに雪だるまのように膨らみ、睡眠不足となっていくおそれを示しています。

多くの場合、大学生は十分な睡眠を取れていないとされ、睡眠不足の影響は学業やスポーツのパフォーマンスにも現れています。

では、睡眠不足を減らしていくと、どうなるでしょうか?

この現象を詳しく調査するため、シェリ・D・マー氏らの研究チームは、スタンフォード大学の男子バスケットボール部員11名を対象に「最低10時間は寝床で過ごす」ことを課した実験を実施しました。

睡眠を十分にとった場合、見事にパフォーマンスが上がっていることがわかります。例えば全力ダッシュを毎日続けた結果、少しずつタイムが短くなっています。睡眠不足を大きな岩に例えると、岩が少しずつ小さな石になっているイメージです。

スポーツだけでなく、営業成績や普段の暮らしの細かいパフォーマンスでも同じことがいえそうです。そのため、「もっと頑張りたい・上手になりたい・伸ばしたい」という項目があれば、睡眠を味方につけるのがおすすめです。

睡眠でパフォーマンスが高まると、自分が立てた目標に向かって良い状態で取り組めるため、ウェルビーイングの向上が期待できます。

レム睡眠は練習したことが身につく時間

睡眠は深い睡眠であるノンレム睡眠と夢を見るレム睡眠で構成されています。

ノンレム睡眠は深い眠りで、体の機能を回復させる役割です。

一方、レム睡眠は記憶力を高めるといわれており、中でも「練習を重ねて体で覚える記憶」が高まります。大リーグで活躍する大谷翔平選手が睡眠を大切にしている理由の一つです。

【ノンレム睡眠とレム睡眠の特徴】

ノンレム睡眠 ・成長ホルモン分泌
・新陳代謝
・脳や体の機能回復
レム睡眠 ・記憶力を高める
・体で覚える記憶を高める
→ピアノやサッカー・野球などで得た新しい技術を身体に染み込ませる時間

下記はすべて睡眠と関係があるウェルビーイングの要素の一例です。

【睡眠と関係があるウェルビーイングの要素】

睡眠と関係のある項目 睡眠との関係
肌のハリ・しわ 水分量が増えるのでシワになりにくい
筋力・体力 睡眠不足だと運動するやる気が出にくい
学習能力 日中の覚醒状態が低下する
記憶能力 しっかりとした睡眠が認知症の原因物質の一つである「アミロイドβ」というタンパク質を体外に排出する役割があるといわれている
気遣い・思いやり 前頭葉の働きが鈍り、人間らしさに関わる部分がうまくいかなくなる
対人関係上のトラブル 睡眠不足の人は十分な睡眠をとっている人に比べて2倍のリスクがあるといわれている

さらに、「運動・食事・睡眠を実践できていない人を基準(1.0)」とした場合、これら3つの生活習慣を実践できている人はどれくらい健康感が高いか? を測定した研究があります。

この場合の「健康感」とは、自己の健康に対する満足度や健康状態をどれだけポジティブに感じているかを表す指標です。身体的、精神的だけでなく、社会的にも満足しているウェルビーイングな状態を指します。

この調査からわかることは次のとおりです。

  • 運動だけ実施しても健康感はさほど良好ではない(0.72)
  • 食事だけ実施している人は少し良好(0.59)
  • 食事・運動を実施している人も良好(0.45)
  • 食事・運動は実施できていないが、睡眠は取れている人は健康感が高い(0.34)
  • 睡眠と食事、睡眠と運動と組み合わせるとさらに良好(0.31・0.27)

運動だけ実施するよりも「睡眠と食事」「睡眠と運動」など睡眠が健康感(ウェルビーイング)に与える影響は大きいことがわかります。

下記の記事では、睡眠も含めたウェルビーイングの高め方を解説しています。ウェルビーイングを理解し、実生活に役立てたい方はご覧ください。

ウェルビーイングの高め方とポイント・診断ツールを紹介【コーチ向け】

ウェルビーイングを高める方法を解説。企業・個人・対人支援者別にウェルビーイングを向上させる具体的な方法と持続させるポイント、ウェルビーイングを可視化するおすすめ診断ツールを紹介します。

記事掲載日:2024年7月30日

睡眠の質・量の改善を促す生活習慣上の工夫

睡眠の質・量を良くするためには、まず3つのポイントを抑えることが大切です。

最近はショートスリーパーになる眠り方をSNSで見かけますが、人類の進化に逆行する行為です。本セミナーなどで正しい睡眠の知識を習得し、偽の情報に流されないようにしましょう

短い睡眠は、認知症のリスクが高まりかねません。例えば、4時間睡眠で有名だったイギリスの元首相サッチャー氏のように、睡眠が短い人物が認知症を発症した例もあります。

下記は、健康な状態を保つのに必要な睡眠時間の目安です。

個人差はありますが、7時間〜9時間の睡眠をとることが理想的です。

なお、自分に必要な睡眠時間を知るためのコツは下記の2つです。

1.平日と休日の就寝・起床時刻が大きくずれていないか
2.翌日の頭の働き方はどうか

平日と休日の起床時刻が2時間以上ずれている場合、普段の睡眠が足りていないおそれがあります。一方で翌日に頭が働かない、強い眠気がくるなどの状態があれば睡眠が足りていない状態です。

睡眠時間が6時間の時と、7時間の時で、「どちらの方が頭の働きが良いか」「目覚めのすっきり感があるか」を見極め、6時間だった睡眠時間を7時間に増やしてみるなど、自分に合った睡眠時間を見つけてみてください。

休日に寝過ぎると体内リズムがずれる

仕事や学校がない日に朝寝坊すると、光や食事をとるタイミングが平日とズレて「体内リズム」が崩れてしまいます。

起床時刻が2時間以上ずれる影響について、中学生4000人を対象に調査を実施しました。睡眠の質の悪化や昼間の眠気やイライラなど日常生活にダメージが及んでいます。

それでも休日2時間以上の朝寝坊が止められない方は、「平日の睡眠時間を少し増やす」対策がおすすめです。

ここで長野県にある、情報通信技術(ICT)を活用して企業の問題を解決する企業、キッセイコムテック株式会社の田口勇次郎氏が、「平日の睡眠時間を少し増やす」ことを実践した記録を紹介します。

実践当初の2015年は、田口氏の1日の睡眠時間が6時間未満と短い一方で、休日になると平日より50分ほど長く眠っていました。当時田口氏は、休日に趣味のスキーに行ける日数が少なく、活動開始時刻も10時台からと遅めでした。

しかし、平日の睡眠を少し増やす取り組みを始めてからスキーの滑走日数が増え、活動開始時刻も8時台からと早くなりました。

平日の睡眠時間を少し増やす取り組みにより、趣味と家族の時間の両方が取れるようになりました。睡眠に取り組んだ結果、休日を効率的に過ごせるようになり、ウェルビーイングが向上したといえる事例です。

平日の睡眠時間を増やすなど、体内時計のリセットに取り組む際のビフォーアフターの測定に、株式会社メタメンターが提供している「ウェルビーイング診断」を活用していただけます。

「ウェルビーイング診断」は、睡眠不足の状態と良質な睡眠を心がけた場合の「心理的・社会的・身体的」な変化を、定量的に測定することが可能です。

自分の睡眠の質が、生活やウェルビーイングにどのような影響を与えているのか具体的に把握できるため、モチベーションの維持にも役立ちます。

どなたでも無料で、5分ほどで気軽に診断できる「ウェルビーイング診断」は下記のボタンから試してみてください。

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借金のように膨らむ睡眠負債

次に「睡眠負債」という概念について解説します。

睡眠負債とは、睡眠時間の不足分が借金のように溜まっていく状態のことです。「休日の睡眠時間 – 平日の睡眠時間」で計算できます。

睡眠負債の計算をしてみて、2時間以上ずれていると「メンタル不調」に影響があるという報告もあります。

睡眠負債は、借金のように徐々に膨らんでいきます。「初めは小さな石でも時間が経つにつれて大きな岩となり、やがては抱えきれないほどになる」というのが、睡眠負債を表すイメージです。

ここで質問です。夜10時半まで素振りを頑張るたつや君と、夜9時半には就寝しているかずや君、野球が上達するのはどちらでしょうか?

正解はかずや君です。

世界でプレイする大谷翔平選手も、かずや君のように睡眠を大切にしていることで知られています。

大谷選手は睡眠によって高いパフォーマンスを発揮しているのはもちろん、言い間違えや失言がない点でも知られています。

「失言がない」というのは、脳がしっかり働いているという状態です。つまり十分な睡眠によって、人間らしさを司る脳が活発に活動しているといえます。

脳のなかでも、睡眠が最も影響するのが「前頭葉」です。前頭葉は、イライラを司る「扁桃体」が暴走しないようにコントロールしています。

睡眠が不足すると、扁桃体をコントロールしきれないためイライラして怒りっぽくなってしまいます。

「人が何を考えているか」などの相手の心を推し量る想像力も低下し、対人関係の悪化を招くリスクも高まりかねません。睡眠が取れている人に比べて、睡眠不足の人の対人トラブルのリスクは、およそ2倍とも言われているほどです。

朝・昼・夜の時間帯別の覚醒度コントロール術

実は人間の体内には、地球時間の24時間よりも少し長い「24.5時間」という時計(リズム)が備わっています。

このわずかな時間差を地球の時間に合わせる調整が必要です。調整を行わない場合、体内時計が次第にズレてしまい、さまざまな生理的な不調を招くことも少なくありません。

体内時計を合わせるポイントを朝・昼・夜に分けて解説します。

朝のポイント:朝は「目から光・口から食事」!

体内時計を合わせるためには、朝の「光と食事」が大切です。朝、運動や通勤通学などで外に出る行動も重要な役割を持っています。

簡単にできるおすすめ方法は、小刻みでもいいので「合計30分以上の光を浴びること」です。

体内時計をリセットするのに必要な光の強さは、2,500ルクス(※)といわれています。室内の窓際1メートルくらいの場所でも約3,000ルクスあるので、必要な光の目安にしてください。なお曇りでも、日中の屋外は8,000ルクス以上あります。

(※)ルクス(lux)は、照度を測定する単位のこと。数値が大きいほど明るい

併せて、朝食を摂ると体内時計がリセットされます。

体内時計が脳の中でリセットされると、抑鬱ホルモンといわれているセロトニンが分泌され始めます。

光を浴びることは精神健康を保つ上でも大切です。特に小さいお子様がいる家庭では、日差しを浴びせながら遊んでもらうと寝つきが良くなったり、夜泣きしなくなったりなどのメリットも期待できます。

ただし、注意点もあります。

イレギュラーな注意点と対策を下表にまとめたので、当てはまる方は参考資料にご活用ください。

こんな人は注意 対策 期待できる効果
本当は6時に起きたいけど
4時や5時に目が覚めてしまう人
・目覚めた時に光を浴びないようにした方が良い
・6時か7時くらいまではサングラスや遮光カーテンなどで光を遮る
・夕方の光を浴びる
目覚める時間を遅らせることができる
自宅で作業をする人 ・朝はいったん外に出る
・窓際で日差しを浴びてから作業に入る
寝つきが悪い問題を解決できる

昼のポイント:短時間のお昼寝で眠気の対処・夕方の居眠りはNG

夕方に眠くなったとしても、眠るのはおすすめしません。

例えば会社や学校帰りの電車などで眠くなる方も多いと思いますが、良質な睡眠には体内時計のリセットと体を疲れさせておくことが大切なため、眠るのはもったいないといえます。

夕方眠らずに、寝る直前まで起きておくとエネルギーが溜まります。十分にエネルギーが溜まってから眠ると、深く眠れます。

「夕方眠らないことのメリットはわかるけど、それでも眠い」という方は、「短時間仮眠」がおすすめです。

机に突っ伏したり壁際にもたれたりなどして「頭を固定」するのがよく眠れるポイントです。

教員免許状の更新講習の場で実験したところ、15分の仮眠で午後からの覚醒度・身体的疲労と眠気の軽減の効果があることがわかりました。しかし、20分を超えると効果は見事に逆転するので、長時間の仮眠を取らないようにしましょう。

夜のポイント:頭寒足熱で脳・からだ・心を休息モードに

夜の時間帯のポイントは、「頭寒足熱」です。人間の身体は体温が下がらないと眠れないため、「頭が冷えて手足がポカポカした状態」は寝つきが良くなります。

快適な睡眠環境に向けて、夜にできる取り組みをまとめました。

【スムーズな眠りにつくためにできる取り組み】
・38度〜39度(夏場)の湯船に10分ほどつかる
・冬場も42度までのぬるま湯がおすすめ
・42度以上の熱いお湯が好きな方は就寝3時間前までに入り終えるとよい
・20時以降は照明を薄暗くする(光の色を白色からオレンジ色に変えたり2つつけていた電灯を1つにするなど)
・早く寝過ぎようとしない
(ふだんの就寝時刻から2~4時間前の時間帯がとても眠りにくい時間帯)
例えば、24時に就寝する人の場合、20時~22時は一番眠りにくい時間帯である。

ここで、光環境についても解説します。

室内の電気を照度計で測ると、1500〜1600ルクスほどです。室内のあかりを朝に浴びても体内時計はリセットされませんが、夜に同程度の光を浴び続けると、見事に体内時計が遅れていきます。

例えばiPadの画面を最大輝度の状態で夜4時間ほど浴びると、体内時計が2〜3時間遅れるといわれています。

対策としては、就寝前には室内の灯りを、「オレンジ系の暖色かつ暗めの照明」にするのが効果的です。自分の体に「夜だな」と思わせると、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌を始め、より質の高い睡眠へと導きます。

眠れない時は無理して寝なくて良い

補足情報としてお伝えすると、寝つきが悪い人は無理に寝ようとせず「起きる時刻はそのままで、寝る時刻を少し遅らせてみる」のがおすすめです。

寝つきが悪くてお悩みの方は、下記のスケジュール法を参考に自分に合った睡眠法を試してみてください。

最後にお伝えしたいことは、下記の4つです。

近年は、薬を使わずに眠れる可能性が高まっています。まずは、生活習慣を見直してできるところから実践するのがおすすめです。

日々の小さな積み重ねが質の高い睡眠へとつながり、頭の働きや体の状態が見事に変化します。間違った睡眠の情報に惑わされず、自分に合った睡眠時間を見つけウェルビーイングを高めていってください。

質疑応答・相談

最後に、セミナーに参加した皆様からの質問・ご相談と田村准教授からの回答を紹介します。

気になるものがありましたら、チェックしてみてください。

  1. 厚生労働省が発表している睡眠時間は主観でしょうか?
  2. 朝食を食べると眠くなるので固形物を摂取していないのですが大丈夫でしょうか?
  3. 質より量が重要といいますが、先生はどのように解釈していますか?
  4. 就寝時間が遅くなっても、毎日ほぼ同じ時間に目が覚めます
  5. 勤務の関係で起床時間が2時間ほど変動し、シフトが変わる週や休み明けには、アラームよりも早く目覚めてしまうことがあります
  6. 夜勤があるシフト制の場合、質の良い睡眠にはどのように取り組んだらいいでしょうか?
  7. 出張時の睡眠の取り方のポイントはありますか?
  8. 睡眠時計の計測デバイスのおすすめはありますか?
  9. 昼寝の際、ベッドで寝てもいいでしょうか?

Q1.厚生労働省が発表している睡眠時間は主観でしょうか?

【回答者:田村准教授】

自分が「何時間くらい寝ているか、その睡眠時間で日中に困る点はないな」という主観の判断でいいと思っています。

近年フィットビット(日々の健康管理や運動量を記録するウェアラブルデバイス)の精度も高まっています。そういったツールを目安として活用しながら、実際の睡眠時間とパフォーマンスのバランスを摂るのもいいのではないでしょうか。

Q2.朝食を食べると眠くなってしまうので固形物を摂取していないのですが大丈夫でしょうか?

【回答者:田村准教授】

さまざまな側面があるため一概には言えませんが、基本的には食べ応えのあるものをとっていただくのをおすすめします。

世界的に高品質な研究を出版している雑誌「ネイチャーコミュニケーションズ」によると、朝に炭水化物を摂取すると覚醒作用があるとされています。また、しっかりとした朝食をとらなかった場合、体内時計がズレていくという報告もあります。

体内時計がズレると眠くなる時刻がどんどんズレていってしまうので、朝食はしっかりとっていただくのがいいですね。

Q3.質より量が重要といいますが、先生はどのように解釈していますか?

【回答者:田村准教授】

いい睡眠の定義としては、「質・量・タイミングが大切」と考えています。

運動選手など特にアクティブな人々は多くの睡眠が必要であり、日中の活動量に比例して翌日の覚醒度や睡眠の質を高めます。また睡眠の質は主観的な要素が強いですが、しっかり寝ることでパフォーマンスも向上すると考えています。

Q4.就寝時間が遅くなっても、毎日ほぼ同じ時間に目が覚めます

【回答者:田村准教授】

現在の睡眠時間から希望する睡眠時間まで、1週間から2週間程度の期間を設けて新しい睡眠スケジュールを続けてみることを提案します。

例えば普段の就寝時間が23時で朝は6時に目覚める場合、就寝時間を11時半や深夜0時まで延長し、この新しいスケジュールを1週間から2週間続けてみます。最初に設定した就寝時間が気に入ったら、その後は30分ずつ就寝時間を早めて継続するイメージです。

体内時計を徐々に新しい睡眠パターンに合わせる取り組みで、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。その際は、一気に大幅に睡眠時間を変更するのではなく、30分単位で少しずつ睡眠時間を調整してみてください。

Q5.勤務の関係で起床時間が2時間ほど変動し、シフトが変わる週や休み明けには、アラームよりも早く目覚めてしまうことがあります

【回答者:田村准教授】

睡眠時間が不規則になりがちな方には、毎日同じ4時間は確実に睡眠をとるようにすること(アンカー睡眠)を推奨します。

例えば、毎日1時から5時までの4時間を確実に睡眠時間として確保するなどが挙げられます。

4時間の睡眠だけでは足りない場合、日中に短時間(1時間から2時間)の睡眠をとり、睡眠不足を補うのも一つの手です。

日中の1時間から2時間の睡眠が難しい場合は、昼間に15分程度の休憩をとるのも有効です。休憩時間を睡眠に活用することで、日中の覚醒コントロールが期待できます。

Q6.夜勤があるシフト制の場合に気をつける点は?

【回答者:田村准教授】

医療関係者からのご質問ということで、睡眠不足によるアクシデントが起こらないような工夫についてお答えします。

特に夜勤や長時間勤務を予定している場合、出勤前や夜勤の前後に短時間の仮眠(15分程度)をとることが奨励されます。

短時間の昼寝を組み合わせて覚醒度のコントロールをおこない、睡眠リズムを維持するためのアプローチが効果的です。

また交代勤務の場合、安全面などから「睡眠惰性(寝起きのぼやけ感)」に注意が必要なため、寝起き30分は危険をともなう作業に従事しないようにしましょう。

Q7.出張時の睡眠の取り方のポイントはありますか?

【回答者:田村准教授】

おすすめなのは、出張に出かける前の日から準備をしておくことです。

出かける前の日の朝は、出張に出発する日と同時刻に起床します。すると夜も早めに眠くなり、自然と出張当日の朝も起きやすくなる効果が期待できます。

Q8.睡眠時計の計測デバイスのおすすめはありますか?

【回答者:田村准教授】

精度が高まっているデバイスでいうと、フィットビットやオーラリングではないでしょうか

いわゆる医療用に使われてる機械よりも、脳波と脳波で測定した変数との相関がかなり高いという結果もありますから、ツールを上手に使って睡眠をモニターしてみてください。

Q9.昼寝の際、ベッドで寝てもいいでしょうか?

【回答者:田村准教授】

横になって昼寝をすると、深い眠りにつきやすくなってしまいます。

深い昼寝は、「寝起きのぼんやり感が増す・夜の睡眠に悪影響を及ぼす」などのおそれが高まりかねません。そのためソファにもたれかかって頭を乗せたり、ベッドでも体を起こしたりなどの工夫をして寝るのがおすすめです。

おわりに

以上が、8月6日に開催されたセミナー、【ビジネスパーソン向け】「健康とウェルビーイングを促す快眠術とは?」でした。

株式会社メタメンターでは、このように身体的な側面からもウェルビーイング向上に役立つ情報をお伝えしていくので、今後も楽しみにしていてください。

自分に合った睡眠時間を見出す際には、ぜひ取り組みの前後で「ウェルビーイング診断」を活用してみてください。

「心理的・社会的・身体的」の側面から総合的なウェルビーイングが指数化できるため、質の良い睡眠に取り組んだ前後での違いが可視化できます。

また対人支援の場においては、コーチングの前後にウェルビーイング診断を活用すれば、クライアントの変化を追跡でき継続的なコーチングプランの提案にも役立ちます。どなたでも無料で利用できる「ウェルビーイング診断」は下記のボタンをクリックのうえ、気軽に試してみてください。

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なお、前回のセミナーの様子は下記からご覧いただけます。心理的ウェルビーイングの計測と向上に対する理解を深め、実践的なスキルが身につくきっかけとなるので併せてご覧ください。

【セミナーレポート】心理的ウェルビーイング向上のための支援:ACTとコーチング入門

2024年5月14日、「心理的ウェルビーイング向上のための支援: ACTとコーチング入門」が開催されました。ACTのエクササイズやコーチングとウェルビーイングの関係などについて解説しています。

記事掲載日:2024年7月2日

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記事監修

代表取締役社長 小泉 領雄南

2011年にGMOペイメントゲートウェイ入社。2016年にGMOフィナンシャルゲート執行役員に就任し、2020年に上場。2021年、早稲田MBA在学中にコーチングに出会い、翌年メタメンター設立。2023年に国際コーチング連盟日本支部運営委員に就任。

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