WELLBEING MAGAZINE

職場ストレスを軽減!ACT(認知行動療法)の実践的な方法とその成果

コラム

記事掲載日:2023年7月21日 
最終更新日:2023年8月9日

ACT(認知行動療法)とストレスマネジメントの接点

現代社会は情報化・高度化が進み、変化のスピードが速くなりつつあります。職場でもその影響は見逃せません。変化への対応力、判断力、チーム力などが求められるようになり、ストレスが増大することが問題となっています。そこで注目されているのが、「ACT(認知行動療法)」を利用したストレスマネジメントです。

ACT(認知行動療法)の基本理念と職場での活用

ACTは「Acceptance and Commitment Therapy」の略で、「受容とコミットメントの療法」と訳されます。認知行動療法の一つとして開発されたこのアプローチは、人間が抱える心の苦痛や問題に対して、それを否定するのではなく受け入れることを基本とします。そして、自己の価値観に基づいた行動を選択し、コミットすることを通して、より良い人生を創出することを目指します。

職場でも、このACTの理念はストレスマネジメントに効果的です。人は誰しも厳しい期限や難しい課題など、さまざまなストレス源を持つことは避けられません。ACTは、そのストレスを否定するのではなく、「自分はストレスを感じている」という事実を受け入れ、自分自身の価値観に基づいた行動をとることを促します。

例えば、プロジェクトがうまく進行しないとき、その原因を他人や環境のせいにして避けるのではなく、自分自身が感じているストレスや苦しみをまずは認識します。そして、その状況をどう改善したいのか、何が自分にとって大切なのかを考え、その目標に向かって行動を起こすことでストレスを管理します。

ACTのストレスマネジメントへの影響と効果

ACTを職場で取り入れることで、個々の社員だけでなく組織全体のストレスマネジメントにもポジティブな影響を与えます。具体的な効果として以下のようなものがあります。

  • 個々の社員が自分自身の感情やストレスを受け入れ、それを元に行動を起こすことで、問題解決のスピードが上がります。これは、問題を先延ばしにすることなく、直接対処することで解決に向けた動きが早まるためです。
  • 社員一人ひとりが自己の価値観に基づいた行動をとることで、自己達成感が上がり、モチベーションが維持されます。これにより、社員の満足度やロイヤルティが上がり、長期的なパフォーマンスの向上につながります。
  • 全体としてストレスの受け入れや問類解決に対する考え方が変わることで、組織文化自体がポジティブに変化します。それにより、組織内のコミュニケーションが改善され、より健康的な職場環境が形成されることが期待できます。これは、組織全体の生産性を向上させるだけでなく、働きがいのある環境を作り上げることにもつながります。

このように、ACTをストレスマネジメントに取り入れることは、個々の社員だけでなく組織全体にとって多大なメリットをもたらす可能性があります。しかし、これらの効果を最大限に引き出すためには、ACTの導入と実践が適切に行われることが不可欠です。

ACTの実践的な手法とその成果

ACTを活用した具体的なストレスマネジメント手法

ACTの基本的なアプローチは、「心のフレキシビリティ」を高めることです。このアプローチは、ストレスを避けることではなく、ストレスと上手く付き合い、それを価値ある行動へとつなげていくことを目指します。以下に、ACTを活用した具体的なストレスマネジメントの手法をいくつか紹介します。

  • マインドフルネス:ACTでは、現在の感情や状況を客観的に観察し、それを認知する力を養います。マインドフルネスの実践は、そのための有効な手段となります。心のフレキシビリティを高め、ストレスと効果的に向き合う力を育てます。
  • 価値を定義する:ACTでは、自分が何を大切に思うか、何を追求したいのかといった価値を明確に定義することが重要です。この価値を定義することで、ストレスに対処するときの行動の指針を設けることができます。
  • コミットメントと行動:ACTでは、定義した価値に基づき、行動することを強調します。ストレスと向き合いながらも、自己の価値に従って行動を続けることで、ストレスを価値ある行動につなげることが可能になります。

海外事例に見るACTのストレスマネジメント効果

ACTは、徐々に世界中の多くの企業で活用され始めています。特にストレスフルな状況下で働く職員の精神的健康を支援するために、この方法が導入されています。以下では、ACTがストレスマネジメントにどのように効果を発揮したか、いくつかの海外事例を通じて見ていきましょう。

まず、ACTを導入した注目すべき事例として、米国の大手IT企業である「Intel」があります。Intelでは、雇用ストレスを軽減し、従業員のパフォーマンスを向上させるための一環として、ACTを基盤にしたプログラムを導入しました。このプログラムでは、従業員がストレスや困難な感情を適切に扱い、それらがパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを防ぐことを目指しています。この取り組みの結果、従業員のストレスレベルの低下、生産性の向上、そして全体的な幸福感の向上が報告されています。

また、英国の公的医療機関である「NHS(National Health Service)」もACTを活用しています。NHSでは、医療従事者が直面するストレスを軽減し、労働環境を改善するために、ACTに基づいたトレーニングプログラムが導入されています。このプログラムは、医療従事者が患者のケアに専念できるよう、自身のストレスや困難な感情を管理する方法を提供しています。NHSのこの取り組みは大きな成功を収め、他の医療機関でも導入が検討されています。

ACTの効果は、学術研究でも報告されています。例えば、スウェーデンの一部の学校では、教員のストレスマネジメントと職場満足度を向上させるためにACTに基づくプログラムが導入されました。この研究によると、ACTのプログラムを完了した教員は、ストレスレベルが低下し、自分の能力をよりポジティブに評価するようになったとの結果が示されました。

これらの事例は、ACTが企業や組織のストレスマネジメントに対して有益であることを示しています。これは、ACTが個々の思考や感情のパターンを変化させ、より良いストレス対処能力を育てることを可能にするためです。したがって、ACTは、多くの企業や組織がストレスと上手く付き合い、生産性と従業員の幸福を向上させるための有効なツールとなり得ます。

ACT導入のステップと効果的な運用方法

ACTの効果を最大限に引き出すためには、その導入と運用において特定のステップと注意点を理解することが重要です。

ACTを職場に導入する具体的なステップ

ACTを職場に導入するためのステップは以下のとおりです。

  1. 理解と認識:ACTを導入する前に、関係者全員がACTの理念と手法を理解し、それを職場のストレスマネジメントにどのように応用するかを認識することが重要です。オンラインのリソース、書籍、ワークショップなどを通じてACTの学習を進めましょう。
  2. 価値の明確化:ACTの中心的な概念は、「値に基づく行動」です。したがって、個々の従業員だけでなく、組織全体としても、何を大切にし、何を達成したいのかを明確にします。
  3. トレーニングとサポート:ACTを職場で効果的に運用するためには、専門的なトレーニングと継続的なサポートが不可欠です。プロフェッショナルなコーチやカウンセラーを雇用するか、または内部の人材を育成することを検討しましょう。
  4. 継続的な評価とフィードバック:ACTの効果を評価し、必要な改善を行うためには、定期的なフィードバックと評価が重要です。具体的なメトリクスを設定し、それを基にACTの導入と実施の進捗を評価します。

ACTを効果的に運用するためのポイント

ACTを効果的に運用するためには、以下のポイントを心掛けましょう。

  • 心のフレキシビリティの強化:マインドフルネスの実践や、思考や感情から自己を分離する「自己観察」の技法などを用いて、心のフレキシビリティを強化します。
  • 価値に基づいた行動の推進:明確化した価値に基づいて行動することを推進します。これには、個々の従業員が自分自身の価値を明確に理解し、それに従った行動をとることが含まれます。
  • 持続的なコミットメント:ACTは一度きりの活動ではなく、持続的なコミットメントが求められます。組織全体として、ACTの理念と手法を継続的に実践し、その成果を評価し続けることが重要です。

以上のような具体的なステップとポイントを理解し、適切に適用することで、ACTを用いたストレスマネジメントは、職場でのストレスを軽減し、生産性を向上させる強力なツールとなるでしょう。

ACTを用いたストレスマネジメントの未来展望

ACTの職場への応用の可能性

ACTは、心のフレキシビリティを強化し、個々の値に基づいた行動を促すことで、ストレスと上手く付き合うための心理的スキルを育てます。これらのスキルは、仕事のストレスを軽減し、より良い職場環境を創出するための鍵となります。

また、ACTは職場環境だけでなく、リーダーシップにも応用可能です。リーダーがACTの理念を理解し実践することで、自己の思考や感情にとらわれることなく、組織全体の価値を重視した決定を下すことが可能となります。これにより、組織の目標達成と従業員の幸福感の両方を追求する、効果的なリーダーシップを実践することができるでしょう。

ACTによるストレスマネジメントのこれからの展望

ストレスマネジメントの手段としてのACTは、その有効性が認識されつつありますが、まだその可能性は完全には引き出されていません。将来的には、より多くの組織がACTの導入を検討し、それを組織文化に組み込むでしょう。

また、ACTの理論や手法を基にしたトレーニングプログラムやツールが開発され、それが職場でのストレスマネジメントを支援することも期待されます。これらのプログラムやツールは、従業員一人ひとりが自己のストレスを理解し、それに対処するスキルを育てるのに役立つでしょう。

さらに、ACTの研究が進むことで、その効果的な応用方法や最適な導入・運用ステップが明らかになるとともに、ACTの効果を評価するための新たなメトリクスが開発されることも期待されます。

以上のような展望を見据えつつ、ACTによるストレスマネジメントは、これからの職場環境を向上させるための重要な手段となるでしょう。それは、ストレスを軽減し、従業員の幸福感を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

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