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コーチングで成果を出しても、なぜか充実感が続かないという人が増えています。近年では目標達成や自己実現だけではなく、クライアントのウェルビーイングを高める支援が注目されています。
「ウェルビーイングコーチングを導入したいと思っていても、何から始めればいいかわからない」というコーチもいるのではないでしょうか。
この記事ではウェルビーイングがコーチングで重視される理由や実践ステップ、効果測定の方法を具体例とともに解説します。ウェルビーイングコーチングの実践を通じて、コーチ自身のキャリア成長にもつながるポイントも併せて紹介します。
ウェルビーイングコーチングを円滑に進めるには、信頼できる客観的な指標を用いてウェルビーイングの状態を把握するのが重要なポイントです。メタメンターでは、学術的な根拠に基づきウェルビーイングの状態を測定できる「ウェルビーイング診断」を提供しています。無料で利用でき5分ほどで終わりますので、お気軽にお試しください。
コーチングやカウンセリングの効果を可視化!
ウェルビーイング診断はこちらなぜ目標達成の先にウェルビーイングが求められているのか

近年、キャリア上の成功といった短期的な目標達成の先に、ウェルビーイングが求められています。主な背景として挙げられるのが、価値観の多様化やバーンアウト(燃え尽き症候群)の増加などです。「本当にこれが私の幸せ?」と立ち止まる人や、決まった成功に向かって走り続けて心が疲れてしまったりする人が増えたことが、ウェルビーイングが求められる要因です。
コーチングの場でも、昇進や目標年収の達成よりも、自分らしい生き方を求める傾向が強まっています。そのためコーチは、単に目標達成を支援するだけではなく、働き方や生き方を見直したいニーズへのアプローチも求められます。
参考:誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現に向けて①|内閣府
「ワーク・ライフ・インテグレーション」への関心の高まりも、ウェルビーイングが求められている理由のひとつです。ワーク・ライフ・インテグレーションとは、仕事と私生活を切り離すのではなく、両方を統合して人生全体の質を高める働き方です。
参考:ワーク・ライフ・インテグレーション 心が動く働き方とは |内閣府
このように、目標達成とあわせて人生全体の豊かさを大切にしたい、と考える人が増えたことが、ウェルビーイングが求められる大きな理由です。
目標達成や自己理解の深化をサポートするコーチングは、達成感や感情的な安定などをもたらします。達成感や感情的な安定は、クライアントのウェルビーイングを高めるのに効果的です。
コーチングでウェルビーイングの実現を目指す方法について詳しく知りたい方は、下記も併せてご覧ください。
コーチングでウェルビーイング実現をする方法
コーチングとウェルビーイングの関係性を解明し、ビジネスパーソンの生産性向上につながる実践方法を紹介。自己成長を促し、より良いキャリアを築くためのヒントが満載です。今すぐ行動を始めましょう。
記事掲載日:2024年7月16日
ウェルビーイングコーチングにおける3つの見えない壁

ウェルビーイングの視点をコーチングに導入する際、多くのコーチが直面する壁が下記の3点です。
困難を感じやすいポイントについて知っておけば、適切な対策がしやすくなります。
壁1.幸福の概念が主観的かつ曖昧である
最初の壁となるのが「クライアントにとっての幸福」を定義する難しさです。
目標とする幸福の概念が曖昧だと、支援する内容や範囲を絞りにくくなります。幸福は主観的なものです。だからこそ、何に幸せを感じるかは人によって大きく異なります。例えば金銭的な豊かさに幸福を感じる人もいれば、自由な時間が増えることに幸福を感じる人もいます。
幸福のとらえ方は文化や価値観にも影響されるため、幸福の個人的な定義をクライアントごとに掘り下げなければなりません。
壁2.成果を測定するのが難しい
セッションの成果を測定しにくい点も、コーチングにおいて見えない壁になり得ます。昇進や売上目標の達成などと異なり、ウェルビーイングの向上は数値化しにくいためです。
幸福感はセッション以外の要因(体調や家族の状況など)によっても変動するのも特徴です。そのため、一貫した指標で変化を追い続けるのが難しいといえます。
例えばセッション中にクライアントが「最近心の余裕が増えた」と話したとします。しかし、どの程度ウェルビーイングが向上したのか、その変化がコーチングによるものだと特定するのは容易ではありません。
成果を可視化できないとコーチングの価値が伝わりにくく、セッションを継続してもらうのに困難をともなう可能性があります。
壁3.セッションがコーチの感覚頼りになりやすい
セッションがコーチの感覚に頼りがちになるのも問題点です。
クライアントのウェルビーイングを客観的に把握する指標がない場合、コーチの勘やクライアントのその日気分での申告にコーチングが依存しやすくなります。コーチの勘やクライアントの自己申告だけを頼りにすると、セッションの目的や目標を見失ってしまうリスクもあります。
単なる「お悩み相談」と化したセッションでは、クライアントのウェルビーイングを達成するのは困難です。
ここまでご紹介した課題を克服するのに効果的なのが、ウェルビーイングの状態の可視化です。次に、ウェルビーイングの状態を客観的に把握できる「ウェルビーイング診断」について紹介します。
ウェルビーイングの可視化には診断ツールがおすすめ

コーチングでクライアントのウェルビーイングを目指すには、セッションによる変化を信頼できる指標で可視化するのが効果的です。
メタメンターのウェルビーイング診断は、心理的・社会的・身体的側面からウェルビーイングの状態を可視化できます。
【ウェルビーイング診断のレポートイメージ】

ウェルビーイングを可視化すると、クライアントが多角的な側面から自身を客観視できるメリットがあります。コーチにとっても、セッションの成果を測定する際の指標として活用するのに有用です。
クライアントに共有する際は、学術的な根拠のある診断ツールを選ぶのが重要なポイントです。ウェルビーイング診断は早稲田大学 大月友 教授(臨床心理士・公認心理師・ACT Japan理事長)が監修しており信頼できる結果なので、安心して提示できます。
ウェルビーイング診断は、医療機関でも使用されるPHQ-9(うつの評価)やGAD-7(不安症の評価)のエビデンスに基づく指標を用いて、メンタルリスクがあると判断される対象を一定の精度で予測できます。
【アラートのイメージ】

「コーチングが適していないクライアント」を見極めるサポートにも有用です。
ウェルビーイングの状態をデータで示しセッションの説得力を高めたい方は、下記のリンクからお試しください。
コーチングやカウンセリングの効果を可視化!
ウェルビーイング診断はこちら診断結果を活かす!ウェルビーイングを高める4つの実践アプローチ

ここからは、ウェルビーイングを高めるコーチングの具体的な方法として、4つのアプローチを紹介します。
上記のなかで重要なのが「幸福の言語化をサポートする」ことです。上記を取り入れれば、クライアントとの信頼関係構築や多面的な成長などに効果を発揮します。
方法1.幸福の言語化をサポートする
まずご紹介するのが、幸福の言語化をサポートするアプローチです。対話や質問を通して「自身にとってのウェルビーイング」の言語化を促すと、実現を後押ししやすくなります。
幸福は抽象的な概念であり、人によって定義が大きく異なります。そのため、問いかけを通して、クライアントが大切にしていることや幸せを感じることなどを深掘りし言語化するのが重要です。
【問いかけの例】
「あなたにとっての幸せは、どのような状態ですか?」
「最近、心から満たされていると感じた瞬間はいつですか?」 など
クライアントにとっての幸福が言語化できれば、行動の動機付けが強化され、目標設定の質も高められます。
方法2. SMART目標にウェルビーイングの視点を加える
普段コーチングで活用しているSMART目標に「その目標はどのように、あなたの幸福につながるか?」という視点を加えるのも効果的です。具体的には、SMART目標を活用する際に、クライアントに下記のように問いかけてみましょう。
【問いかけの例】
「目標を達成する過程に、充足感は得られそうですか?」
「目標の達成によって、自分にとっての幸せな未来に近づきますか?」 など
ウェルビーイングの視点を加えると、過程や結果そのものがクライアントの幸福感を高めるような、質の高い目標を設定できます。
方法3.ACT(アクセプタンス&コミットメントトレーニング)を活用する
ACT(アクセプタンス&コミットメントトレーニング)の活用も、ウェルビーイングを高めるのにおすすめの方法です。ACTとは、クライアントが気づきとスキルを身につけ、人生を前に進めるのを目指す心理学的トレーニングプログラムです。
主なエクササイズとしては「10の領域のエクササイズ」が挙げられます。人生のさまざまな場面での満足度を10点満点で評価し、重要度が高いが満足度が低い領域に注目します。
ACTの活用は、ネガティブな感情をありのままに受け入れながらも流されず、価値観に沿った行動を選択しやすくなるのがメリットです。自分自身の価値観に従った行動が取れるようになれば、心理的ウェルビーイングの向上が期待できます。
ACTの具体的な活用方法や学習方法などについて詳しく知りたい方は、下記も併せてご覧ください。
【セミナーレポート】心理的ウェルビーイング向上のための支援:ACTとコーチング入門
2024年5月14日、「心理的ウェルビーイング向上のための支援: ACTとコーチング入門」が開催されました。ACTのエクササイズやコーチングとウェルビーイングの関係などについて解説しています。
記事掲載日:2024年7月2日
方法4.マインドフルネスを活用する
マインドフルネスとは自己の思考や感情、身体感覚に対して注意を向け、その瞬間瞬間を判断せずに受け入れる状態のことです。
コーチングにマインドフルネスを活用するのには、次のようなメリットがあります。
- 自己の感情を深く理解できる
- 感情に振り回されず、落ち着いて内面を見つめ直せるようになる
- ステレオタイプや思い込みなどに左右されにくくなる
ありのままの自分に向き合えるようになると、自己理解の深化が期待できます。感情のコントロールやストレス管理にも役立つため、ウェルビーイングな状態を目指すのに効果的です。
マインドフルネスが特に効果的なのは「〜べき思考」の強いクライアントです。具体的な活用方法として、簡易的な呼吸法エクササイズをセッション開始前に導入するといった方法が挙げられます。
コーチングにマインドフルネスを取り入れた成功事例などを詳しく知りたい方は、下記も併せてご覧ください。
心と体をつなぐ:マインドフルネスとコーチングのパワフルな交差点
マインドフルネスとコーチングが交差するところで、心の平穏が生み出す高効果コーチングの力を解明します。
記事掲載日:2023年7月12日
コーチングでクライアントのウェルビーイングを高める3つのメリット

クライアントのウェルビーイングを高めるアプローチは、コーチ自身にとっても大きなメリットがあります。ここでは、主な3つのメリットを紹介します。
メリットを理解すればクライアントに提供できる価値が明確になり、より専門性の高いコーチングを実践できます。
メリット1.他コーチとの明確な差別化
まず挙げられるのがコーチングの専門家として、他のコーチとの明確な差別化ができる点です。目標達成の先にある幸福まで見据えるアプローチは、クライアントに高い付加価値と信頼感をもたらします。
クライアントが求めているのは、単なる成功ではなく幸せな成功です。目標達成だけでは満たされないニーズに直接応えられれば、コーチとしての強みになります。
ウェルビーイング診断などを活用して「なぜこのアプローチが有効なのか?」を論理的に説明できれば、クライアントの納得感を高めるのに効果的です。感謝のワークを実践する、強みを活かせる活動時間を増やすなど、エビデンスのある具体的なアクションを提案できます。
メリット2.クライアントの満足度と契約継続率の向上
クライアントの満足度を高め、結果として契約継続率の向上につながるのもメリットです。ウェルビーイングコーチングを活用すると、次のような人生のあらゆる場面で活用できるスキルが身につきます。
【ウェルビーイングコーチングで身につくスキルの例】
・ストレスへの対処スキル
・モチベーションの維持
・良好な人間関係構築スキル
例えば職場の人間関係に悩むクライアントに感謝を伝える、相手の良い面に目を向けるといった視点でアプローチしたとします。コーチングで身につけた人間関係構築のスキルは、職場以外に家族や友人との関係にも応用が可能です。
コーチングを通して人間関係が円滑になれば、人生全体の幸福度が上がった実感が得られます。「自分の力で人生を良くしていける」という自信がつき、コーチングへのモチベーションも高くなります。
メリット3.コーチ自身のセッションへの自信向上
ウェルビーイングという視点は、コーチ自身のセッションへの自信を高めるのにもつながります。ウェルビーイング診断などの客観的な指標の活用は、セッションの進め方に一貫性と安定感を持たせるのに効果的です。
コーチ自身の感覚のみに頼らないため「このアプローチは本当に正しいのだろうか」という不安が軽減できるのもメリットです。コーチが自信を持ってセッションに臨めれば安心感を与えられ、信頼関係の構築もスムーズになります。
信頼関係が構築できれば「仕事の成果とは別に、楽しいと感じることが増えました」「家族との関係が良くなりました」といった肯定的なフィードバックを得やすくなります。
クライアントからの肯定的なフィードバックは、コーチ自身の自己肯定感を高める重要な要素です。クライアントの幸福に貢献しているという手応えによって、より前向きな気持ちでコーチングに取り組めます。
ここまでコーチがクライアントのウェルビーイングを高めるメリットや、具体的な実践方法などを紹介しました。しかし、ウェルビーイングコーチングを実践するには、テクニックや考え方を知るだけでは不十分です。
次ではICFの指針に基づいた、プロコーチとして特に意識してほしい倫理や注意点を紹介します。
プロコーチとして知っておくべき2つの注意点

ウェルビーイングコーチングは、コーチ自身のあり方も成果に影響します。ここでは、コーチングの専門職として、必ずおさえておきたいポイントを2つ紹介します。
注意点1.コーチングとほかの支援的職業のアプローチを明確に区別する
まず大切なのは、コーチングがすべての人に効果的ではない点を理解することです。ICFの指針でも、別のアプローチが効果的とコーチが判断した場合は、必要に応じて専門職を紹介するといった対応が求められています。
参考:コーチングについて – ICF Japan Chapter | 一般社団法人国際コーチング連盟 日本支部
表の左下にある「重大な精神病理的症状」を有する対象には、コーチングが機能しにくいことがわかっています。

統合失調症などにより重大な精神病理的症状を有する当事者は、現実検討能力(現実を正しく認識する能力)の低下をきたすケースが珍しくありません。
現実検討能力が低下すると、自己を客観視するのが難しくなります。クライアント自身がコーチングの適応かどうかを判断するのは困難なため、コーチによる適切な対応が求められます。
参考:統合失調症の症状| よりどころメンタルクリニック桜木町 心療内科・精神科
ストレスを受けているが機能している状態は、コーチングがバーンアウトのリスクを高める可能性があるため要注意です。クライアントの状態を見極めたうえでのアプローチが必要になります。
【注意が必要なクライアントの例】
周囲の人の悪口が多く、攻撃的な態度が目立つ
急激な意欲低下により、コーチングに集中できない など
注意点2.コーチングの質はコーチ自身のウェルビーイングに左右される
コーチ自身のウェルビーイングに意識を向けることは、コーチングの質を維持するのに直結します。コーチ自身がウェルビーイングな状態でなければ、クライアントに対して効果的な問いかけやフィードバックをおこなうのは困難です。
ICFの指針でも、以下がコーチングの実践において重要な要素とされています。
各セッションの準備や実施中、終了後において、感情的・身体的・精神的なウェルビーイングを維持している
優秀なコーチが持つひたむきさや誠実さは、バーンアウトの引き金になり得ます。バーンアウトを避けるためには、ウェルビーイング診断などを活用し、自己の状態を客観視するのが効果的です。
質の高いコーチングを安定して提供できればクライアントの満足度が高まり、信頼関係をスムーズに構築できます。結果として達成感やクライアント確保による経済的な安定といった、コーチ自身のウェルビーイングにも良い影響をもたらします。
参考:バーンアウト (燃え尽き症候群)–ヒューマンサービス職のストレス|日本労働研究雑誌
まとめ:ウェルビーイングコーチングは現状の可視化から始めよう

価値観の多様化により、コーチングも目標達成の先にある持続的な幸福に焦点を当てる傾向が強まっています。
ウェルビーイングを高めるコーチングは、クライアントの満足度を高めるため、契約継続率アップにも効果的です。コーチングへのやり甲斐や自信によって、コーチ自身のウェルビーイング向上も期待できます。
ウェルビーイングコーチングでもっとも重要なのが、ウェルビーイングの状態を客観的な指標で把握し効果測定をおこなうことです。メタメンターでは、コーチングの効果を可視化する際に役立つウェルビーイング診断を無料で提供しています。
クライアントの幸福度をデータで把握し、より精度の高いコーチングを実践したい方は、下記のリンクからお試しください。
コーチングやカウンセリングの効果を可視化!
ウェルビーイング診断はこちら
記事監修
ICF認定PCCコーチ/代表取締役社長 小泉 領雄南
2011年にGMOペイメントゲートウェイに入社。2016年、子会社の執行役員 経営企画室長に就任し、2020年の上場を経験。 早稲田大学MBA在学中にコーチングを本格的に学び、翌年メタメンターを設立。 国際コーチング連盟(ICF)が認定するPCCコーチ(500時間以上の豊富な実績が求められるICFの専門資格)として、MBAホルダーおよび上場企業の経営企画経験、そして元ICFジャパン運営委員としての知見を活かし、事業承継に関わる経営者・後継者向けコーチングを専門におこなうほか、コーチ・カウンセラー向けのウェルビーイング診断やCRMサービスの開発にも取り組む。





