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ワークエンゲージメントとストレスチェック:組織を活性化し生産性を高める戦略

記事掲載日:2025年4月7日 
最終更新日:2025年3月30日

近年、企業の競争環境はますます激化し、従業員の心身の健康と高いパフォーマンスが、組織の成長と持続可能性を左右する重要な要素となっています。従来のストレス対策に加えて、ワークエンゲージメントという概念が注目を集めており、ストレスチェックと組み合わせることで、より効果的な組織運営が可能になります。

ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための有効な手段です。しかし、ストレスがない状態が必ずしも高いパフォーマンスにつながるとは限りません。ワークエンゲージメントは、仕事に対する熱意、没頭、活力といったポジティブな心理状態を表し、従業員の自発的な貢献意欲を引き出すことで、生産性向上や創造性の発揮に貢献します。

本記事では、「ワークエンゲージメント」と「ストレスチェック」という2つの重要な要素について、その定義から、それぞれの違い、相乗効果、具体的な活用方法までを詳しく解説します。企業の経営者、人事担当者、従業員の皆様にとって、組織全体の活性化と個人の幸福度向上に役立つ情報を提供することを目的としています。

ワークエンゲージメントとは?ストレスチェックとの違いを明確に理解する

ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態であり、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素で構成されます。活き活きとして精力的に仕事に取り組む「活力」、仕事に誇りと意義を感じる「熱意」、そして、仕事に集中し時間を忘れて取り組む「没頭」。これら3つの要素が高い状態が、ワークエンゲージメントが高い状態と言えます。

一方、ストレスチェックは、従業員のストレス状態を測定し、メンタルヘルス不調のリスクを早期に発見するためのものです。ストレスの原因を特定し、個別のケアや職場環境の改善につなげることを目的としています。ワークエンゲージメントとストレスチェックは、どちらも従業員の心身の健康に関わるものですが、その焦点とアプローチは異なります。

ストレスチェックは、ネガティブな状態を検知し、改善を目指す「マイナスからゼロへ」のアプローチであるのに対し、ワークエンゲージメントは、ポジティブな状態を醸成し、より高いパフォーマンスを目指す「ゼロからプラスへ」のアプローチと言えます。

ストレスチェック:メンタルヘルス不調の予防と早期発見

ストレスチェックは、労働安全衛生法に基づいて、企業が従業員の心理的な負担を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために実施するものです。従業員は、仕事や職場環境に関する質問に回答し、その結果に基づいて、高ストレス者として選定された場合には、医師による面接指導を受けることができます。

ストレスチェックの結果は、個人のメンタルヘルスケアだけでなく、職場環境の改善にも活用されます。例えば、特定の部署で高ストレス者が多い場合は、その部署の業務内容や人間関係に問題がないか調査し、改善策を講じることが求められます。

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを守るための重要なツールですが、それだけでは組織全体の活性化にはつながりません。そこで、ワークエンゲージメントを高める取り組みと組み合わせることで、より効果的なメンタルヘルス対策が可能になります。

ワークエンゲージメント:従業員の自律性と成長を促進

ワークエンゲージメントは、従業員が自らの仕事に主体的に取り組み、成長を実感できる環境を整備することで高まります。具体的には、従業員が自分のスキルや能力を最大限に発揮できるような仕事を与えたり、挑戦的な目標を設定させたり、チームワークを促進するような施策を実施したりすることが有効です。

ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する満足度が高く、創造性や生産性が向上し、組織への貢献意欲も高まります。また、ワークエンゲージメントは、離職率の低下や欠勤率の減少にもつながると言われています。

ワークエンゲージメントを高めるためには、従業員の個性や価値観を尊重し、多様な働き方を支援することが重要です。例えば、フレックスタイム制度やテレワーク制度を導入したり、育児や介護と両立しやすい制度を整備したりすることで、従業員のワークライフバランスを支援することができます。

具体例:ワークエンゲージメントを高める施策と、ストレスチェックの結果を活かす連携

具体的な施策として、以下のような例が挙げられます。

目標設定

従業員自身が主体的に目標を設定し、その達成に向けて努力する過程を支援する。

フィードバック

定期的なフィードバックを通じて、従業員の成長を促し、自己肯定感を高める。

キャリア開発

従業員のキャリアプランを支援し、能力開発の機会を提供する。

チームビルディング

チーム内のコミュニケーションを促進し、協力体制を構築する。

ワークライフバランス

柔軟な働き方を支援し、プライベートとの両立を可能にする。

ストレスチェックの結果をワークエンゲージメント向上の取り組みに活かすには、例えば、高ストレス者が多い部署に対して、チームビルディングの研修を実施したり、業務内容の見直しを行ったりすることが考えられます。また、ワークエンゲージメントが低い従業員に対しては、キャリアカウンセリングを実施したり、新しい仕事に挑戦する機会を提供したりすることで、モチベーションを高めることができます。

これらの施策を効果的に実施するためには、経営層の理解とコミットメントが不可欠です。ワークエンゲージメント向上は、単なる福利厚生ではなく、組織全体の成長戦略の一環として捉え、長期的な視点で取り組むことが重要です。

ストレス対策にワークエンゲージメントを活用する3つの理由

ストレス対策としてワークエンゲージメントを活用することには、以下の3つの大きな理由があります。

1. 従業員のモチベーションと主体性を向上させる

ワークエンゲージメントは、仕事に対する意欲と熱意を高め、従業員が自ら積極的に仕事に取り組む姿勢を育みます。従来のストレス対策は、ストレスの原因を取り除くことに重点が置かれていましたが、ワークエンゲージメントは、仕事のやりがいや達成感を高めることで、ストレスに対する抵抗力を高める効果が期待できます。

例えば、ある企業では、従業員が自分のアイデアを自由に提案できる制度を導入したところ、従業員のワークエンゲージメントが向上し、新しい商品開発につながったという事例があります。従業員が自分の意見が反映されることで、仕事に対する主体性が高まり、モチベーション向上につながったと考えられます。

2. 個々のスキルを最大限に活かし、創造性を引き出す

ワークエンゲージメントが高い状態では、従業員は自分の能力を最大限に発揮し、創造的なアイデアを生み出すことができます。仕事に対する熱意と集中力が高まることで、困難な課題にも積極的に挑戦し、新しい解決策を見出すことができるようになります。

別の企業では、従業員が自分の得意分野を活かせるプロジェクトに自由に参加できる制度を導入したところ、従業員のワークエンゲージメントが向上し、業務効率が大幅に改善されたという事例があります。従業員が自分のスキルを活かせることで、仕事に対する自信が高まり、創造性を発揮しやすくなったと考えられます。

3. 離職率の低下と組織への定着を促進する

ワークエンゲージメントは、従業員の組織への愛着心を高め、離職率の低下につながります。仕事に対する満足度が高く、組織に貢献しているという実感を持つことで、従業員は長期的に組織に留まりたいと考えるようになります。

ある調査によると、ワークエンゲージメントが高い企業は、低い企業に比べて離職率が約30%低いという結果が出ています。ワークエンゲージメントを高めることは、優秀な人材の流出を防ぎ、組織の競争力を維持するためにも重要な戦略と言えます。

ワークエンゲージメントを測定する方法:ストレスチェックの活用

ワークエンゲージメントを測定する方法はいくつかありますが、その中でも、ストレスチェックの結果を活用する方法は、手軽で効果的です。

新職業性ストレス簡易調査票(80項目版)による測定

厚生労働省が推奨する「新職業性ストレス簡易調査票」(通称:80項目版)は、ストレスの原因だけでなく、ワークエンゲージメントも測定できる項目が含まれています。この調査票を用いることで、従業員のストレス状態とワークエンゲージメントの両方を同時に把握することができます。

80項目版のストレスチェックでは、「仕事の資源」に関する質問項目を通じて、ワークエンゲージメントを測定します。具体的には、「仕事の裁量権」「上司からのサポート」「同僚からのサポート」などが評価されます。これらの項目が高いほど、ワークエンゲージメントが高いと判断されます。

UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント・スケール)による測定

UWES(Utrecht Work Engagement Scale)は、ワークエンゲージメントを測定するための国際的に広く使用されている尺度です。UWESは、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素をそれぞれ測定する項目で構成されており、ワークエンゲージメントのレベルを総合的に評価することができます。

UWESは、従業員に対するアンケート調査として実施され、その結果に基づいて、ワークエンゲージメントのレベルを分析します。UWESの結果は、ワークエンゲージメント向上のための施策を検討する際の基礎データとして活用されます。

ストレスチェックの結果とUWESの結果を組み合わせて分析する

ストレスチェックの結果とUWESの結果を組み合わせて分析することで、より詳細な情報が得られます。例えば、ストレスが高いにも関わらず、ワークエンゲージメントも高い従業員は、バーンアウトのリスクが高い可能性があります。このような従業員に対しては、個別のケアやサポートが必要となります。

また、ストレスが低く、ワークエンゲージメントも低い従業員は、仕事に対するモチベーションが低い可能性があります。このような従業員に対しては、キャリアカウンセリングを実施したり、新しい仕事に挑戦する機会を提供したりすることで、モチベーションを高めることができます。

ワークエンゲージメントを高める具体的な取り組みイメージ

ワークエンゲージメントを高めるためには、組織全体で様々な取り組みを行う必要があります。以下に、具体的な取り組みイメージを紹介します。

組織文化の醸成:心理的安全性の確保

従業員が安心して意見を言える、失敗を恐れずに挑戦できる組織文化を醸成することが重要です。そのためには、上司が部下に対して積極的にフィードバックを行ったり、チーム内で互いに協力し合えるような関係性を築いたりすることが大切です。

例えば、ある企業では、毎週金曜日に「失敗から学ぶ会」というイベントを開催しています。このイベントでは、従業員が自分の失敗体験を共有し、そこから得られた教訓を話し合います。このようなイベントを通じて、失敗を恐れずに挑戦できる組織文化を醸成することができます。

働きがいのある仕事の設計:ジョブ・クラフティング

従業員が自分のスキルや興味関心に合わせて、仕事内容を調整したり、新しい仕事に挑戦したりできるような機会を提供することが重要です。ジョブ・クラフティングとは、従業員が自らの仕事を主体的にデザインし、意味や価値を見出すための取り組みです。

例えば、ある企業では、従業員が自分のキャリアプランを上司と共有し、その実現に向けて、仕事内容や役割を調整できる制度を導入しています。このような制度を通じて、従業員は自分の成長を実感でき、ワークエンゲージメントを高めることができます。

適切な評価と報酬:公平性の確保

従業員の貢献度や成果を適切に評価し、それに見合った報酬を提供することが重要です。評価制度は、従業員が納得できるものであり、公平性が確保されている必要があります。

例えば、ある企業では、360度評価制度を導入しています。この制度では、上司だけでなく、同僚や部下からも評価を受けることができます。これにより、従業員の多角的な視点からの評価が可能になり、より公平な評価が実現できます。

ストレスチェックとワークエンゲージメントの両輪で生産性アップ!

ストレスチェックとワークエンゲージメントは、組織の活性化と生産性向上に不可欠な両輪です。ストレスチェックで従業員のメンタルヘルスをケアし、ワークエンゲージメントを高めることで、従業員はより意欲的に仕事に取り組み、組織全体のパフォーマンスが向上します。

ストレスチェックの結果を分析し、職場環境の改善やメンタルヘルスケアの充実を図ることはもちろん、ワークエンゲージメントを高めるための施策を積極的に実施することが重要です。従業員一人ひとりが、自分の能力を最大限に発揮し、仕事にやりがいを感じられるような環境を整備することで、組織全体の成長と発展につながります。

ワークエンゲージメントとストレスチェックは、単なる人事施策ではなく、組織の成長戦略の中核をなす重要な要素です。経営層、人事担当者、そして従業員一人ひとりが、この2つの要素を理解し、積極的に取り組むことで、より活力があり、創造性豊かな組織を実現することができます。

まとめ:ワークエンゲージメントとストレスチェックで、持続可能な組織を築く

本記事では、ワークエンゲージメントとストレスチェックの重要性、それぞれの違い、相乗効果、具体的な活用方法について解説しました。ワークエンゲージメントを高めることで、従業員のモチベーションと主体性が向上し、個々のスキルが最大限に活かされ、離職率の低下につながります。

ストレスチェックの結果をワークエンゲージメント向上の取り組みに活かすことで、より効果的なメンタルヘルス対策が可能になります。組織文化の醸成、働きがいのある仕事の設計、適切な評価と報酬制度などを通じて、ワークエンゲージメントを高めることが重要です。

ワークエンゲージメントとストレスチェックは、組織の持続的な成長を支える重要な要素です。この2つの要素をバランス良く活用し、従業員が心身ともに健康で、意欲的に仕事に取り組める組織を築き上げることが、これからの時代に求められる企業のあり方と言えるでしょう。

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