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ウェルビーイングとは、心も体も健康で、幸せな状態のことをいいます。2021年、政府の国策としても明確に位置付けられ、多くの会社でウェルビーイング経営が実施されているのが現状です。
そこで本記事では、ウェルビーイング経営の概要やメリット、向上のポイントをご紹介します。記事の最後には、実際にウェルビーイングを取り入れている会社事例も紹介しているので、ぜひご覧ください。
ウェルビーイング経営は内面的な要素が多いことから成果が見えにくく、「ウェルビーイング経営の効果検証が難しい」という課題も少なくありません。
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ウェルビーイング経営とは一般的に、「企業が従業員の健康や幸福を重視し、組織全体のウェルビーイング促進を目指す経営手法」です。実は、明確な定義は定められていません。
よく「健康経営」と比べられますが、ウェルビーイング経営とは焦点を当てている箇所に違いがあります。健康経営とウェルビーイング経営の違いは以下のとおりです。
【健康経営とウェルビーイング経営の違い】
健康経営 | ウェルビーイング経営 |
---|---|
健康に焦点を当てている | 精神的・感情的健康や社会的健康、個人の成長や満足度にも焦点を当てている |
ウェルビーイング経営は、組織全体の文化や働き方を改善し、従業員が豊かな人生を送ることを目指し、支援しています。
OECD諸国(経済協力開発機構。2024年2月時点で欧州を中心に38カ国が加盟)のなかで比較してみると、日本は幸福度も生産性も下位に甘んじています。日本が生産性を高めるためにも、ウェルビーイング経営への取り組みは欠かせません。
参考:World Happiness, Trust and Social Connections in Times of Crisis
ウェルビーイング経営が注目されている背景
近年、企業でもウェルビーイングへの関心は高まっています。
ウェルビーイング経営が注目される背景には、働き方改革の推進をはじめ、メンタルヘルスの認知度上昇や社会全体の健康と幸福への価値観のシフトなどが考えられます。
ウェルビーイング経営が会社に注目されている背景を3つ、下表にまとめました。
【ウェルビーイング経営が注目されている背景】
背景 | 概要 | 詳細 |
---|---|---|
働き方改革の推進(※1) | 厚生労働省が打ち出した「一億総活躍社会」に向けた取り組みのひとつ | ウェルビーイングな状態、つまり肉体的・精神的・社会的に満たされた状態が不可欠 |
人材版伊藤レポート2.0の公表(※2) | 経済産業省が開催した「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書」のこと | ・企業が未来に向けてどのように投資していくべきかについて考えるための指針 ・これを機に企業にも人的資本に関する課題が認識されてきた |
人的資本に関する情報開示の義務化(※3) | 企業が自社の従業員や労働力に関する情報を報告書に記載すること | ・ISO30414に基づいて開示 ・「エンゲージメント等従業員意識と従業員定着率の測定指標」なども盛り込まれた11の領域の開示対応が義務化された |
参考:(※1)雇用・労働「働き方改革」の実現に向けて
(※2)人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~
(※3)「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について:金融庁
従業員のウェルビーイングを重視し、働きやすい環境を整備することで、従業員のエンゲージメントや満足度が向上し、生産性や業績の改善につながると期待されています。
また、企業の社会的責任や評判の観点からも、従業員の健康と幸福に配慮することが求められるようになっており、ウェルビーイング経営は企業の持続的な成長と発展に不可欠な要素として認識されつつあります。
ウェルビーイングを会社に取り入れる3つのメリット
ウェルビーイングの向上を、会社全体の取り組みとしておこなうメリットは大きく次のとおりです。
メリットを知ることで、自社の状況に合わせた効果的な戦略を立てることができます。ひとつずつ見ていきましょう。
メリット1.生産性の向上
メリットの1つ目は、生産性の向上です。
心理学者のソーニャ・リュボミルスキー氏、ローラ・キング氏、エド・ディーナ氏らの論文では、従業員が幸せな状態で仕事をした場合、生産性31%アップ、売り上げ37%アップ、創造性が3倍になると発表されています。
【従業員の幸福が仕事にもたらす効果】
参考:The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?
このことからも「従業員の幸福が企業全体の生産性を大幅に向上させる鍵」といえます。
メリット2.離職率の低下
メリットの2つ目は、離職率の低下が期待できることです。
従業員のウェルビーイングが高まると、比例して仕事へのモチベーションや満足度も高まります。加えて、職場の環境が「自分の健康や幸福に配慮してくれている」と感じることで、従業員は自社と長期的な関係を築きたいと考えるようになり、離職率が低下します。
下記の記事では、従業員が会社へ貢献する思いを数値化した「エンゲージメント」について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
従業員のエンゲージメント指標とは?業績向上につながる4つの要素も解説
従業員エンゲージメント指標とは、企業へ貢献する思いを数値化したものです。本記事では、指標が大切な理由や役立つサービスなどを解説しています。
記事掲載日:2024年4月7日
メリット3.従業員のモチベーションアップ
3つ目のメリットは、従業員のモチベーションアップです。
ウェルビーイングを重視する企業では、従業員の自己成長や自己実現を促進する機会を設けているところも少なくありません。
例えば、従業員が自己成長を実感できるような健康プログラムやストレス管理セミナー、キャリア開発プログラムなどを用意することで、仕事に対するモチベーションを高められます。
社内のウェルビーイングが向上する5つのポイント
次に、社内のウェルビーイングが向上する5つのポイントを紹介します。
参考:日本企業における働き方改革の働きがいと エンプロイ・エンゲイジメント
ポイントを押さえて、より効果的な施策やワークショップの起案などにお役立てください。
ポイント1.良いコミュニケーションをとる
まず1つ目のポイントは、良いコミュニケーションをとることです。
良好な人間関係が築けていると、そうでない場合に比べて生産性が高いことが実験でも明らかにされています。そのため、より良いコミュニケーションをとれるような制度づくりがおすすめです。下記にコミュニケーションがとりやすい制度の例をまとめてみました。
【コミュニケーションがとりやすい制度の一例】
制度 | 内容 | 期待できる効果 |
---|---|---|
1on1制度 | 一般的に上司と部下が1対1でミーティング | 上司と部下に信頼関係が生まれる |
メンター制度 | 社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)を個別支援活動 | 後輩社員は不安が解消され、先輩社員は成長につながる |
フリーアドレス制度 | ・席が固定ではない ・自由に席を選んで仕事 |
年齢や役職、部署に関係なくコミュニケーションがとれる |
円滑なコミュニケーションは、安心感や精神的安定にもつながります。テキストチャットや社内SNSなどの従業員用コミュニケーションツールを導入し、誰もが発言しやすい環境を整備していきましょう。
ポイント2.健康を推進する
2つ目のポイントは、従業員の健康を推進することです。
例えば、下記のような取り組みが有効です。
- 健康診断
- 予防接種の実施
- ストレスチェック
- 産業医への相談窓口
- フィットネスなどの利用費用の負担
- 健康食品や健康促進グッズの費用補助
従業員が健康なライフスタイルを維持することで、仕事に集中できる環境を作り出せます。
ポイント3.労働環境を見直す
3つ目のポイントは労働環境を見直すことです。
働き方改革の推進などで、企業にとって従業員の長時間労働の是正は欠かせません。具体的には、フレックスタイム制やインターバル制、テレワークの導入などが挙げられます。
【長時間労働の是正が期待できる制度の一例】
制度 | 内容 |
---|---|
フレックスタイム制 |
|
インターバル制 | 一日の勤務終了から次の勤務開始までの間に休息時間を設ける制度 |
テレワーク | オンラインツールを活用し、オフィス以外の場所で仕事をおこなうこと |
その他、年休や育休が取得しやすい雰囲気づくりなど、柔軟な働き方ができる労働環境も含まれます。
ポイント4.ビジョンを共有する
4つ目のポイントは、従業員と会社のビジョンを共有することです。
経営者が積極的に、企業のパーパス(存在意義)や長期的なビジョンを発信し、ともに向かう方向を示すことが必要です。
パーパスの好例として、ソニーグループが挙げられます。
ソニーグループは、2019年1月に下記のようなパーパスを発表しました。
【ソニーグループのパーパス】
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」 |
その後、11万人の多様な社員にパーパスが浸透し8割以上がポジティブにとらえて、組織全体の士気とクリエイティビティを高めることに成功しました。
成功要因の一例は下記のとおりです。
【成功要因の一例】
|
ソニーの例からも、会社と社員の信頼と理解がウェルビーイングの基盤となっていることがわかります。
参考:ソニーグループポータル | Sony’s Purpose & Values
ポイント5.可視化できるツールを使う
5つ目のポイントは、ウェルビーイングの取り組みを可視化できるツールを使うことです。
ウェルビーイングは抽象的な要素も多いため、「成果が出たのか」「費用対効果効果はあったのか」など、数値的にわかりにくい点が課題でした。
従業員の現状やウェルビーイング経営における施策の妥当性を判断するためには、ウェルビーイングを可視化できるツールの導入がおすすめです。
例えば、メタメンターが提供するサービスでは、定量的にウェルビーイング診断ができます。
【メタメンターによるウェルビーイング診断の特徴】
信頼性 | 早稲田大学人間科学学術院 大月教授(臨床心理士・公認心理士)が監修 |
---|---|
簡便性 | 直感で回答できる(5分以内) |
網羅性 | 対人支援サービスや福利厚生の刷新などの前後で測定することで、どのように変化したかという変化も可視化できる |
心理的側面から測定するツールは多く見られますが、本サービスは定量的に診断できることが特徴です。診断が終了した後は、専用の診断URLが発行されます。このURLを使用すれば、診断結果を手軽に共有・管理することができます。
「ウェルビーイング経営の効果検証が難しい」などの悩みの解消に貢献するウェルビーイング診断について詳しく知りたい方は、下記の動画でウェルビーイング診断の特徴と活用方法を解説していますので、参考にご覧ください。
ウェルビーイングを導入した3社の事例
ここで、ウェルビーイングの理念を導入して取り組んでいる3つの会社を紹介します。
ウェルビーイング経営を積極的に導入している会社の取り組みを知ることで、自社の従業員のニーズにあった施策立案に活用できます。
事例1.株式会社デンソー
出典:株式会社デンソー
株式会社デンソーは、マネジメントの第一歩として、社員の健康状態を数字で評価する取り組みを2016年から進めてきました。
【株式会社デンソーの事例】
コンセプト | 「社員の健康」は重要な経営資源である |
---|---|
主な取り組み | ・社員の健康状態の見える化を実施 ・各職場に健康リーダーを置き、各現場に合った施策を実施 |
見込める効果や実際の成果 | ・メンバー同士がお互いの体調変化に気付き、労り合うシーンが増えた ・接点のなかった同僚や仲間と気兼ねなく話せるようになった |
経営課題として社員の健康管理を実施することが、「あなたを大事にしている」というメッセージにもなり、会社と社員のより良い関係づくりに貢献しています。
参考:サステナブルな社会は、「健康」から始まる|DRIVEN BASE(ドリブンベース)- デンソー
事例2.積水ハウス株式会社
出典:積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社は、グローバルビジョンである「『わが家』を世界一 幸せな場所にする」をもとに、まずは従業員一人ひとりの幸せを追求しています。
【積水ハウス株式会社の事例】
コンセプト | 積水ハウスを世界一幸せな会社にする |
---|---|
主な取り組み | ・日本で初めて「幸せ度調査」を実施し、職場の幸せを見える化 ・調査結果をもとに、対話やワークショップを実施 |
見込める効果や実際の成果 | ・心理的安全性の高いコミュニケーションが活発になる ・接点のなかった同僚や仲間と気兼ねなく話せるようになった |
対話やワークショップを実施することで、心理的安全性の高いコミュニケーションが活発となり、積水ハウスのイノベーションが起こりやすい風土づくりにつながっています。
参考:従業員の幸せ度調査 | 多様な働き方の推進 | ダイバーシティ&インクルージョン | 積水ハウス
「ウェルビーイング」は企業に何をもたらすのか 積水ハウスと楽天グループに学ぶ幸せ起点の組織づくり
事例3.楽天グループ株式会社
出典:楽天グループ株式会社
楽天グループ株式会社は、楽天健康宣言「Well-being First」のもと、従業員のウェルビーイングにコミットする活動を推進しています。
【楽天グループ株式会社の事例】
コンセプト | Well-being First |
---|---|
主な取り組み | ・ウェルビーイングサーベイ(調査)を定期的に実施 ・ヨガやストレッチなどのイベントを定期的に開催 |
見込める効果や実際の成果 | ・調査によって課題が特定され、取り組みやすくなった ・イベント参加者の一体感が高まった |
働く上で「仲間」・「時間」・「空間」の3つの要素を「三間(さんま)」と定義し、各要素に余白を設けることを意識する取り組みが特徴的です。
参考:多様な働き方が進む、今こそ意識すべき「コレクティブ・ウェルビーイング」〜持続可能なチームに必要な「三間(さんま)と余白」とは?~
まとめ:ツールを使用して効果的に支援しよう
企業がウェルビーイング経営を導入すると、従業員のモチベーションが上がり、生産性向上や離職率低下などのメリットがあります。ウェルビーイングを高めるためには、現状の把握や施策の効果検証は必須です。
メタメンターでは、ウェルビーイングを定量的に可視化できるウェルビーイング診断を提供しています。
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ウェルビーイング診断はこちら記事監修
代表取締役社長 小泉 領雄南
2011年にGMOペイメントゲートウェイ入社。2016年にGMOフィナンシャルゲート執行役員に就任し、2020年に上場。2021年、早稲田MBA在学中にコーチングに出会い、翌年メタメンター設立。2023年に国際コーチング連盟日本支部運営委員に就任。