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突然、従業員が退職代行を使って会社を去り「なぜ直接言ってくれなかったのか」「信頼関係がなかったのか」とショックを受ける方もいるのではないでしょうか?
退職代行が使われる背景には「退職を楽にしたい」という理由だけではなく、さまざまな要因が関係しているケースがほとんどです。
企業が気づかないうちに職場の環境が原因となり、退職を決断させてしまっているおそれもあります。
そこで本記事では、退職代行を使う主な理由や企業・人事ができる対策を紹介します。
従業員の声に耳を傾け、退職リスクを未然に防ぐには「従業員が働きやすいと感じる職場かどうか」を客観的に把握することも大切です。
株式会社メタメンターが提供する「ウェルビーイング診断」は、心理的・社会的・身体的な要素を統合的に評価し、従業員のウェルビーイングを数値化できます。
現状を定量的に把握し、職場環境の改善に向けて具体的な施策の立案にも活用できる「ウェルビーイング診断」は、どなたでも無料でご利用いただけます。下記から気軽に試してみてください。
退職代行を利用する人の現状
株式会社マイナビの調べによると、直近1年間に転職した人のうち退職代行を利用した人は16.6%でした。
年代別にみると、20代が18.6%で最も高く、年代が低いほど退職代行を利用する割合が高いことがわかります。
出典:「退職代行サービスに関する調査レポート(企業・個人)」を発表 – 株式会社マイナビ
一方で「退職代行を利用して退職した人がいた」企業は約4社に1社の割合で、年々増加しています。
出典:「退職代行サービスに関する調査レポート(企業・個人)」を発表 – 株式会社マイナビ
業種別では「金融・保険・コンサルティング」が31.4%で、最も高いという結果でした。続いて「IT・通信・インターネット」が29.8%、「メーカー」が25.4%となっています。
なぜ従業員は退職代行を選ぶのか?主な4つの理由
なぜ従業員は退職代行を選ぶのでしょうか。本章では、主な4つの理由を紹介します。
それぞれの理由を詳しくみていきましょう。
理由1.退職を引き止められている
最初の理由は、退職の保留や引き止めです。
退職の意思を伝えても、上司や会社から強く引き止められ、人手不足が深刻な場合は「辞められると困る」と退職が認められないケースもあります。
「もう辞めると決めたのに、何度も説得されるのがつらい」「話が進まず、いつ退職できるのかわからない」などの状況が続くと、従業員の多くは自力での退職を断念し、退職代行の利用を検討する、と考えられます。
理由2.退職を言い出しにくい
退職を直接伝えることは、多くの人にとって心理的な負担が大きい場面です。
日頃から上司とコミュニケーションが取れていない場合は、この負担がさらに大きくなり、退職を切り出すハードルが上がって退職代行の利用検討につながります。
また新入社員の場合、入社前に抱いていた期待と実際の仕事内容や職場環境とのギャップに戸惑い、上司に相談できないまま退職代行を利用するケースも見受けられます。
新入社員に限らず、次のような状況が重なる場合、従業員は上司との会話を避けがちです。
【上司との会話を避けたくなる状況の例】
・上司との関係が形式的で、普段からコミュニケーションが取れていない
・上司から厳しい言葉を受けた経験があり再び否定されるのではないかという恐怖がある
など
心理的・実務的な負担の蓄積による上司とのコミュニケーションの困難さから、「すべてを代行サービスに任せたほうが楽」と感じることも、退職代行を選択するきっかけの一つと考えられます。
理由3.人間関係に問題がある
職場における人間関係のトラブルも、退職代行が選ばれる理由の一つです。
例えば、パワハラやセクハラなどのハラスメント行為がある場合、従業員は職場にいること自体が苦痛になるケースがあります。
このような職場でのいじめや嫌がらせは、従業員に深刻なストレスと心理的ダメージを与えかねません。
精神的に疲弊した状態では自力の対応が難しく、第三者の支援が必要です。しかし周囲に相談できる同僚や上司、窓口などがないと、第三者の力を借りられません。その結果、問題を抱え込み退職代行に頼るケースが増えています。
理由4.一刻も早く職場を離れたい
従業員の「一刻も早く職場を離れたい」というニーズも、退職代行利用の要因となっています。
具体的には下記のような状況が挙げられます。
【すぐにでも退職したい状況の例】
仕事のストレス | 過度な労働時間や、達成できない高い目標などが原因で、心身に大きな負担がかかる |
---|---|
人間関係の悩み | 人間関係の問題が原因で、職場にいることが困難になり、状況を改善する努力よりも退職するほうが早いと感じる |
次のステップを急ぎたい | 新しい仕事やキャリアのスタートを切るために、今の職場にとどまる理由がないと判断する |
このような問題は、従業員が働きがいを感じられないためモチベーションの低下につながり、離職率の上昇や生産性の低下を引き起こす一因となっています。
「従業員が働きがいを感じられる環境づくり」や「組織への貢献度向上」には、自社の状況を正確に理解し、優先的に取り組むべき課題を明確にしましょう。
従業員のやる気を引き出し、生産性の向上を図りたい方は下記の記事をチェックしてみてください。

職場のウェルビーイングとエンゲージメントの関係は?違いや高める方法
従業員エンゲージメントの向上は、離職防止や生産性向上に効果的です。本記事では、ウェルビーイングとの違いや関係性、エンゲージメント向上を実現するポイントと役立つツールなどを解説します。
記事掲載日:2024年5月29日

従業員エンゲージメントを高める方法とは?メリットと取り組み事例を解説
従業員エンゲージメントは、企業の業績や従業員の定着率などに影響を与えます。自社の従業員エンゲージメントを高めるには、課題に合った取り組みを行うこと、ウェルビーイング診断を活用した現状把握や施策の評価を行うことが重要です。
記事掲載日:2024年4月30日
また、職場の離職率を改善する方法の一つとしてコーチングを用いた施策も有用です。社内コーチングに関心のある方は、下記の記事をご覧ください。

社内コーチングプログラムを通じて離職率を改善する方法
離職率低下に効果的なコーチング手法を紹介。経営者・人事担当者必見の改善策や成功事例を解説し、社員満足度向上を実現します。コーチングの基礎から応用まで学び、実践を始めましょう。
記事掲載日:2024年9月17日
ショック!退職代行を使われた際の適切な対応
本章では、退職代行を使われた際の適切な対応を紹介します。
なお、退職代行の利用は個人の自由であり、法的な要件を満たしていれば従業員の退職は拒否できない点を押さえておきましょう。
対応1.冷静に事実関係を正確に把握する
部下や同僚が突然退職代行を利用した際、驚きやショックを感じるのは当然の反応です。
しかし、感情的な対応は状況を悪化させるおそれがあるため、まずは冷静になり、事実関係を正確に把握することが大切です。
退職代行業者からの連絡を受けた際には、冷静に下記の点をチェックしましょう。
⬜︎ 従業員本人が依頼したものか(委任状の有無や意思確認のチェック)
⬜︎ 業者が正式に登録されている法人やサービスであるか
⬜︎ 業者が弁護士のサポートを受けているか
⬜︎ 退職日や退職手続きに関するスケジュールなど具体的な提案があるか
⬜︎ 労働基準法や会社の規定に基づき、退職手続きが適切に進められているか
なお、未払い給与や残業代の請求交渉など「退職時の交渉が可能」なのは、弁護士または弁護士法人のみです。
不適切な交渉過程の情報漏えいや、法定要件を満たさない退職手続きによる無効などのリスクを回避するために、退職代行業者の運営主体が弁護士法人を確認しましょう。
対応2.職場の課題を見つめ直し改善につなげる
退職代行の利用背景には、職場環境や人間関係の問題が潜んでいる可能性があります。
そこで従業員が直接退職の意思を伝えられない理由を考察し、職場の問題を洗い出すことが必要です。
勤怠記録・離職率・従業員満足度調査などのデータをもとに問題の傾向を把握し、解決すべき課題を整理しましょう。よくある問題は次のとおりです。
【退職代行を利用する裏にあると思われる問題】
・ハラスメント
・業務負担の偏り
・キャリアパスが不明確
・労働時間の長時間化
・コミュニケーション不足
次の章では、これらの問題解決に向けた施策を紹介します。
退職代行を使われないための職場づくりの5つの施策
退職代行を使われないための職場づくりの主な施策は、次の5つです。
退職代行サービスの利用防止には、従業員が働きやすい環境を整備し、信頼関係を築ける職場づくりが重要です。それでは、ひとつずつ紹介します。
施策1.ハラスメント防止への徹底した取り組み
退職代行を利用する従業員のなかには、ハラスメント問題を理由に挙げる人もいます。
令和4年4月からは、「労働施策総合推進法」において、「パワーハラスメント防止措置」がすべての事業主に義務化されています。
企業は、厚生労働省のサイトを参考にしながら、下記のような施策を早急に行わなければなりません。
【ハラスメント防止のためにおこなうべき施策】
・ハラスメント防止に関する研修の実施
・相談窓口の設置
・匿名での通報システムの導入
・ハラスメント行為に対する厳格な対応 など
職場でのハラスメントを防ぐためには、従業員が安心して声を上げられる仕組みづくりがポイントです。
施策2.業務負担の偏りを解消
業務負担の偏りは、従業員のストレスや不満を引き起こすおそれがあります。
そこで、下記のように「公平な業務分担を推進する対策」がおすすめです。
【公平な業務分担のための取り組み例】
・業務量の可視化
・人員配置の最適化
・効率化できる業務の洗い出し
・フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方の導入 など
業務の偏りを防ぐには、タスクの見える化と適切な分担が大切です。
従業員の業務量を可視化し、業務負担が偏っている者を特定したり、デジタル化できるところを洗い出したりして、効率化を推進しましょう。
施策3.キャリアパスを明確にする取り組み
「自分の将来が見えない」と感じた従業員は、退職を検討しやすくなる傾向があります。
退職を防ぐためには、各従業員にキャリアパスの情報を提供し、将来像を具体的に描けるような支援をしましょう。
例えば、下記のような施策がおすすめです。
【明確なキャリアパスの施策】
・キャリアパスに関する説明会の実施
・目標設定の支援
・キャリアコンサルティングの導入 など
従業員の成長を支援し、会社と個人の未来をつなぐ施策をおこなうことで、長期的な定着につながります。
施策4.長時間労働の解消と柔軟な働き方の促進
長時間労働は、身体的疲労やプライベートの時間が減少するなどして、従業員が退職を決断する直接的な理由になり得ます。
そこで柔軟な働き方ができるように、下記のような施策を採り入れてみましょう。
【柔軟な働き方への取り組み例】
・部署ごと、あるいは個人ごとに残業時間の削減目標を設定する
・業務時間を可視化し、残業の原因を分析する
・休日出勤した場合は、代休の取得を奨励する など
適切な労働時間を維持し、ワークライフバランスを確保することが、持続可能な職場づくりにつながります。
従業員が働きやすい職場をつくるためには、日々の業務環境を改善するだけでなく、エンゲージメント(仕事や職場に対して情熱を持ち、積極的に貢献しようとする姿勢)を高める取り組みが必要です。
自社が取り組むべき課題に近い他の企業の事例をみることで、効果的な解決策へのヒントが得られることもあります。
「どのように従業員との信頼関係を築き、働きがいのある環境を整えているのか」、具体的な事例を知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。

【課題別】従業員エンゲージメント向上の成功事例7選!7つの施策も徹底解説
従業員エンゲージメントを高めるには、成果が出ている企業の事例を見るのがおすすめです。本記事では、課題別の事例やおすすめの施策などを解説します
記事掲載日:2024年4月30日
施策5.コミュニケーションを向上させる仕組みづくり
コミュニケーション不足の背景には、意見を伝えにくい職場環境や、適切な情報共有の仕組みが整っていないことが挙げられます。
コミュニケーション不足を解決するためには、下記のような施策がおすすめです。
【コミュニケーション促進におすすめの施策】
・1on1ミーティング
・チームビルディング(チームの結束力を高めるための活動や研修)の導入
・チャットツールや情報共有ツールの活用 など
組織内の対話を活性化し、従業員が意見を言いやすい風土を醸成することは、心理的安全性を高め、信頼関係の構築につながります。その結果、従業員の「ウェルビーイング向上」も期待できます。
ウェルビーイングとは、「心理的、社会的、身体的に満たされた状態」のことです。
企業におすすめしたいのは、従業員の精神的・感情的健康や社会的健康、個人の成長や満足度にも焦点を当てている経営である「ウェルビーイング経営」への取り組みです。
ウェルビーイング経営で従業員が幸せな状態で仕事をした場合、生産性31%アップ、売り上げ37%アップ、創造性が3倍になるといわれています。
【従業員の幸福が仕事にもたらす効果】
参考:The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?
「ウェルビーイング経営」についてさらに理解を深めたい方は、下記も併せてご覧ください。

ウェルビーイング経営で会社が変わる!3つのメリットや成功事例を紹介
ウェルビーイングを会社に導入すると、生産性向上だけでなく離職率低下も期待できます。本記事では、ウェルビーイング経営の3つのメリット成功事例、ポイントなどを解説します。
記事掲載日:2024年4月7日
従業員のウェルビーイング向上は、モチベーションや生産性の向上など業務効率化にも影響することがわかっています。逆にいえば、従業員のウェルビーイングが低い場合は、モチベーション低下や退職を検討している可能性があるということです。
従業員のウェルビーイングを定期的に把握することで、低下傾向にある従業員を早期に特定でき、従業員にあった支援や対策を状況が深刻化する前に講じられます。ここからは、ウェルビーイングを効果的に把握できるツールを紹介します。
退職代行の防止には従業員のウェルビーイングの把握が大切!
従業員一人ひとりのウェルビーイングを把握する際には、ツールや外部の専門家の活用が効果的です。
例えば株式会社メタメンターが提供する「ウェルビーイング診断」は、従業員のウェルビーイングを数値化できるツールです。
従業員のパフォーマンスや幸福度が、組織にどのような影響を与えているかを定量的に示すことで、漠然とした課題が明確になり、組織全体のウェルビーイング向上にもつながります。
▼従業員のウェルビーイングを可視化できるウェルビーイング診断画面
診断結果は自動的に記録されるため、ウェルビーイングの変化も把握できます。
▼施策前後での診断で、従業員の変化が把握できる
ウェルビーイング診断の主な特徴は、下記のとおりです。
【ウェルビーイング診断の主な特徴】
・心理的、社会的、身体的の3側面から総合的にウェルビーイングを評価
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・幅広い知見をベースに早稲田大学人間科学学術院 大月教授が監修しているため、学術的な根拠に基づくため信頼性が高い
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健康診断のように定期的に測定することで、従業員の成長や変化の把握、改善策の効果検証に活用できる「ウェルビーイング診断」は、下記からお気軽にお試しください。
組織開発の成果を測る指標として使える!
ウェルビーイング診断はこちらまとめ:従業員のウェルビーイングを高めて退職代行の使用を未然に防ごう
従業員が退職代行を利用する背景には、人間関係の問題や心理的負担などがあります。
退職代行の利用は、企業にとって大きな問題です。退職代行を使われる前に職場環境を見直し、従業員が働きやすい環境を整えましょう。
従業員の働きやすい環境づくりには、職場の問題を発見し、解消する取り組みが必須です。問題の発見には、従業員のウェルビーイングの把握が効果的です。
ウェルビーイングの把握は、過度な業務負担やコミュニケーション不足など、職場の問題の発見につながり、感覚的な判断ではなくデータに基づいた改善策の立案にも役立ちます。
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記事監修
代表取締役社長 小泉 領雄南
2011年にGMOペイメントゲートウェイ入社。2016年にGMOフィナンシャルゲート執行役員に就任し、2020年に上場。2021年、早稲田MBA在学中にコーチングに出会い、翌年メタメンター設立。2023年に国際コーチング連盟日本支部運営委員に就任。