WELLBEING MAGAZINE

リモートワーク時代の新課題とその解決策:国内外のコーチング事例を交えて解説

記事掲載日:2023年7月5日 
最終更新日:2024年9月4日

リモートワークの課題

リモートワークは様々なメリットをもたらしていますが、同時に新たな課題も生まれています。特に、コミュニケーションの難しさ、モチベーションの維持、ワークライフバランスの維持という3つの課題が挙げられます。

コミュニケーションの難しさ

リモートワークにおいて最も大きな課題となるのが、コミュニケーションの難しさです。オフィスでの対面式のコミュニケーションとは異なり、リモートワークでは非言語的なコミュニケーションの要素が失われます。これにより、誤解が生じやすくなり、また、互いの意見を正確に理解することが難しくなります。

また、リモートワークではチームの一体感を感じにくいこともコミュニケーションの課題となります。従業員間の信頼関係やチームの連携を維持するためには、定期的なコミュニケーションが必要ですが、これがリモートワークでは難しくなります。

モチベーションの維持

次に、リモートワークにおけるモチベーションの維持も大きな課題です。自宅で働くことは、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることを意味します。これにより、従業員は自身の働き方やパフォーマンスに対して自己責任を持つことが求められます。

しかし、自己管理能力が必要なリモートワークでは、自分自身を動機づけて仕事を進めることが難しくなることがあります。特に、長期間にわたるリモートワークでは、孤独感や焦燥感が生じ、モチベーションを維持することが一層難しくなります。

ワークライフバランスの維持

また、リモートワークではワークライフバランスの維持が課題となります。自宅で働くことで、仕事とプライベートの時間が入れ替わりやすくなり、仕事の時間が伸びてしまうことがあります。また、自宅での生活と仕事が混在することで、休息時間が確保しにくくなる場合もあります。

さらに、リモートワークでは物理的な移動がないため、体の運動不足や健康問題を引き起こす可能性もあります。これらが結果としてパフォーマンスの低下やストレスの増加を招き、ワークライフバランスを崩すことにつながります。

これらの課題を解決するためには、リーダーやマネージャーがメンバーの状態を理解し、それぞれに対する適切なサポートやガイダンスを提供することが重要です。しかし、そのためには、リーダーやマネージャー自身がリモートワークの課題を理解し、適切な対策を講じる能力が求められます。

そこで注目されるのが、コーチングの活用です。コーチングは、個々の従業員が自身の課題を自覚し、それを解決するための行動を自ら考えることを支援します。これにより、リモートワークの課題を個々の従業員が自己解決する力を育てることができます。

以上のように、リモートワークは多くの課題をもたらしますが、それらはすべてコーチングの活用によって解決可能です。次のセクションでは、具体的なコーチングの活用法やその効果について詳しく見ていきましょう。

コーチングとその有効性

リモートワークの課題を解決するための一つの方法として、コーチングが挙げられます。コーチングは、個々の従業員が自己啓発を促し、問題解決能力を高めるための支援を提供します。

コーチングの役割

コーチングは、個々の人が自己理解を深め、自分の能力や潜在力を最大限に引き出すことを目的とします。コーチは、質問を通じて対話を進め、コーチングを受ける人が自分自身の思考パターンや行動を認識し、自分で解決策を見つけることを助けます。

また、コーチングはパフォーマンスの向上だけでなく、自己啓発やキャリア開発にも有効です。自分自身の強みや弱み、価値観、目標を理解することで、より自己主導的な行動を取ることができます。

リモートワークの環境では、コーチングは従業員が自己管理能力を向上させ、自分自身で問題を解決できるように支援する役割を果たします。これにより、リモートワークによるコミュニケーションの難しさやモチベーションの低下、ワークライフバランスの維持といった課題に対処する力を育てることができます。

コーチングの効果

コーチングがリモートワークの課題解決に有効であると言える具体的な証拠は何でしょうか。その答えは、多くの研究から得られる数値によって明らかにされています。

例えば、コーチングを導入した企業では、従業員のエンゲージメントが向上し、生産性が20%以上も増加するという報告があります。さらに、コーチングを受けたマネージャーの部下は、そのパフォーマンスが67%以上も改善したというデータもあります

これらの数値は、コーチングが個々の従業員だけでなく、組織全体のパフォーマンスにも大きな影響を与えることを示しています。従業員の自己管理能力や問題解決能力が向上することで、チーム全体の生産性やパフォーマンスが向上し、組織全体の成果に対しても大きな影響を与えます。

また、コーチングはリモートワークの特性に合った形で行うことができます。例えば、ビデオ通話やチャットを活用したオンラインコーチング、アプリを用いた自己学習型コーチングなど、個々の状況に応じて最適な形でコーチングを受けることができます。

具体的には、ZoomやGoogle Meetといったビデオ通話ツールを使って、リアルタイムでのコーチングセッションを行ったり、Microsoft TeamsやSlackのようなコミュニケーションツールを使って、日常的なフィードバックや助言を受けることができます。

また、コーチハブやBetterUpといったコーチングアプリを利用すると、専門のコーチからのパーソナライズされたフィードバックや、自己啓発のための学習コンテンツを手軽に利用することができます。これらのツールは、個々のスケジュールに合わせて自由にコーチングを受けることができるため、自分自身のペースで自己啓発を進めることができます。

このように、コーチングはリモートワークの課題を解決するための有効な手段であると言えます。自己管理能力や問題解決能力の向上により、従業員一人一人がより生産性の高い働き方を見つけ、組織全体のパフォーマンスの向上に寄与することが期待できます。

成功事例:海外と国内

コーチングの有効性は、多くの海外・国内の企業が導入した結果からも確認することができます。ここでは、GoogleとBetterUPの海外の事例と、メルカリとCoachHubの国内の事例を通じて、コーチングの成功事例について詳しく見ていきましょう。

海外の事例:GoogleとBetterUP

Googleは、世界最大のテクノロジー企業の一つであり、その成功は強力なコーチング文化によるところが大きいと言われています。Googleは「Project Oxygen」と呼ばれる研究を通じて、マネージャーのパフォーマンスがチームのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことを確認しました。そして、マネージャーのパフォーマンスを向上させるための最も効果的な方法としてコーチングを採用しました。

Googleでは、専門のコーチを雇用するだけでなく、全てのマネージャーにコーチングスキルを教えることを求めました。これにより、マネージャーは自分自身のパフォーマンスを向上させるだけでなく、部下のパフォーマンス向上にも直接貢献することができました。この結果、Googleはコミュニケーション、コラボレーション、生産性の向上を実現しました。

次にBetterUPは、個々の従業員に対してパーソナライズされたコーチングを提供するアプリです。BetterUPは、従業員が自身の能力を最大限に活用できるように、科学的に証明された手法を用いて個々の従業員に対してパーソナライズされたコーチングを提供します。

BetterUPはコーチングによる効果を定量的に測定し、開示しています。彼らの研究によれば、BetterUPのプログラムを受けた従業員は、エンゲージメント、幸福感、生産性がそれぞれ30%、31%、27%向上したという結果が出ています。

国内の事例:メルカリとCoachHub

メルカリは、日本最大のフリマアプリであり、社内でのコーチングの活用によって生産性と従業員満足度の向上を実現しました。メルカリでは、新たなプロジェクトやチームの立ち上げに当たって、チームメンバー自身がリーダーシップを発揮し、自ら問題解決に取り組む文化が根付いています。これを実現するために、コーチングの手法が積極的に活用されています。

コーチングを通じて、メンバー一人一人が自己啓発のための機会を持つとともに、チーム全体としても成果を上げる力が養われています。また、リーダーが部下に対してコーチング的なアプローチを取ることで、部下からのフィードバックも活発に得られるようになり、より良い意思決定や改善策の導入につながっています。これらは、メルカリが高い成長を遂げる一因となっています。

次に、CoachHubは、ビジネスコーチングのプラットフォームを提供している企業です。CoachHubは、AI技術を活用して、個々の従業員に最適なコーチをマッチングし、ビデオ通話によるコーチングセッションを提供します。このサービスにより、企業は自社の従業員に対してコーチングを継続的かつ手軽に提供することができます。

CoachHubを導入した企業は、従業員のパフォーマンス向上や満足度向上のほか、タレントの確保や育成、社員のモチベーション向上など、様々なメリットを享受しています。たとえば、CoachHubのプログラムを通じてコーチングを受けた従業員の75%が自己認識が向上し、67%が自己効力感が向上し、62%が職場でのパフォーマンスが向上したと報告しています。

これらの成功事例を見ると、リモートワーク環境下でも、コーチングをうまく活用すれば従業員のパフォーマンス向上や生産性向上、そして組織全体の成長を実現することが可能であることがわかります。

まとめ:コーチングがもたらすリモートワークの成功

リモートワークの課題とその解決策についてのコーチングの活用は、業界を問わず重要性が増しています。特に現代の労働環境では、働き方が多様化し、従業員一人ひとりが自分の働き方を選択する余地が増えてきています。これにより、企業は従業員が自己管理能力を向上させ、自分自身で問題を解決できるように支援する必要性が高まっています。

それぞれの企業がリモートワークの課題にどのように対応し、コーチングをどのように利用しているのかを学ぶことで、私たちは自分たちの組織やチームでもコーチングを有効に活用する方法を見つけることができます。各企業がどのように課題を克服し、どのような結果を得ているのかを具体的に知ることで、私たち自身が新たな課題にどのように取り組むべきか、具体的なヒントを得ることができます。

最後に、コーチングは個々の従業員の成長だけでなく、組織全体の成長にも寄与します。組織の中で働く全ての人が自分の可能性を最大限に発揮し、組織全体が一丸となって目標に向かって進むことができる環境を作るためには、コーチングの役割は重要です。

コーチングは従業員が自己啓発を促し、問題解決能力を高めるための支援を提供します。そして、それがリモートワークの課題を克服するための鍵となります。

話題のキーワード