WELLBEING MAGAZINE

どうやるの?コーチングのスキルやプロセス

コラム

記事掲載日:2023年4月18日 
最終更新日:2024年5月9日

コーチとして活動されている方はもちろん、最近では、Googleがマネージャーに求める行動規範一つ目に「良いコーチである」ことが言及されていることからも社内での1on1等においてもコーチングスキルが求められてきています。
では、コーチングとは具体的にどのようなスキルやプロセスで実践されているのでしょうか。

  1. <本記事で分かること>
    ・コーチとしての関わり方について。
    ・コーチングには、どのようなスキルが求められるのか。
    ・コーチングは、どのようなプロセスで行われるのか。

コーチとしての関わり方って

まずは、簡単な用語の確認からしていきます。本記事では以下のように定義しています。

コーチ コーチング(主に1on1の対話)を実施する主体者
クライアント コーチがコーチングをする対象者

コーチはクライアントが話した内容に対して、様々な関わり方をしていきます。
話した内容を「傾聴」したり、「質問」したり、「フィードバック」したりすることで(下図の「?」に該当する箇所)、コーチとクライアントとの間で良い関係性を作れるような関わり方をしていきます。
そして、ここで特に言及しておきたいのは、コーチはクライアントが自ら目標を何とかできるようにすることを支援する関わり方が基本となっており、コーチが目標を達成させるわけではありません。

コーチングに求められるスキルとは

コーチングに求められるスキルとして一般的には「質問」「傾聴」「フィードバック」などの要素が挙げられると思います。どのような定義かというと、以下の通りです。

質問 「はい」か「いいえ」で回答できるクローズドクエスチョンから、自由に考えて回答することができるオープンクエスチョンがあります。コーチングにおいても両方の質問を意図を持って使い分けていきますが、関係作りやアイスブレイク的な使い方でクローズドクエスチョンを利用するケースもあれば、クライアントの思考に働きかけ、思考を表出化(言語化)するためにオープンクエスチョンを利用するケースもあります。
傾聴 耳を傾けて聴くことを傾聴と言いますが、相手の発言を判断したりせずに、相手に肯定的な関心を寄せ、共感的な理解を示すコミュニケーションのスキルになります。傾聴によって、相手は自分だけではわからなかった自分自身について深く理解することにつながり、どのような行動をとるべきか気付くきっかけを与えることが期待できます。
フィードバック 「フィード(feed)」とは、もともと「フード(food)」(食べ物・栄養)が語源となっております。つまりフィードバックとは、相手に対して成長するための栄養を与えることを意味しているのです。
大きくは、前向きな表現を使うポジティブフィードバックと好ましくない点を指摘するネガティブフィードバックに分けられますが、コーチングにおいては、クライアントを評価することはせずにニュートラルにコーチが感じたことをフィードバックするケースも多くあります。

ただし、商業的背景に基づくコーチングは理論的背景に基づいているコーチング心理学とは違って解釈も様々なため、必ずしも上記3つのスキルに収斂されるわけではありません。そこで、商業的背景に基づくコーチング、コーチング心理学においてはどのようなスキルが求められているのかを確認してみましょう。

コーチング心理学に関する英国のCentre for Coachingでの認証トレーニングプログラムではコーチングに求められるスキルとして「傾聴」「共感」「詳細な探索」「確認」「要約」「挑戦」「理解」「探検」「言い換え」「反映」「目標設定」が挙げられています。

ここから読み取れるのは、コーチングは「質問」「傾聴」「フィードバック」だけではなく(それらの要素は重要視しながらも)あくまでも「クライアントが成長するためのプロセスや関係性」を体現出来ているかどうかという観点の方がより重要だと考えられます。
例えば、コーチングというのは一般的にはアドバイスや提案はしないと言われていますが、「クライアントの成長を支援するための支援やその過程」において、「質問」や「傾聴」「フィードバック」などの行為よりもアドバイスや提案をした方が価値が高いと判断した場合、コーチとしての関わり方としては提案やアドバイスすることは正しいとも言えるでしょう。

もちろん、提案やアドバイスをする際には、クライアントに一言「もしかしたら、私の経験が役に立つかもしれないから、提案しても良いでしょうか?」等の合意を得ることは大前提としつつ、その際に忘れてはいけないのはクライアントの可能性を信じるという観点と時間軸の観点です。

クライアントの可能性を信じるという観点:

提案やアドバイスが良くないと言われる理由としては、コーチが提案する内容を提案として受け取る場合と、クライアントが試行錯誤し、自らその解に辿り着く場合では腹落ち度や定着度が異なってくるからです。クライアントがその解に辿り着けると信じて接することがすぐに提案することを控えるきっかけになるでしょう。

時間軸の観点:

しかしながら、時間軸の観点も重要になってきます。例えば、クライアントは明日大きなイベントを控えており、コーチの経験を元にクライアントに提案することが、明日のイベントでの成功に寄与し、結果としてクライアントの成長につながると判断した場合は提案というのもあり得るでしょう。これが数ヶ月後などのように時間軸が先の場合は、関わり方が変わってくるかもしれません。

続いて、コーチングのプロセスについてです。

どのようなプロセスでコーチングを実践するか?

さて、ここまでコーチとクライアントの関わり方、そして関わり方に必要なスキルについて確認してきましたが、それをどのように活用したら良いのでしょうか?

商業的背景に基づくコーチングには様々な流派がありプロセスも異なりますが、理論的背景に基づくコーチングについてはGROWモデルという体系化されたプロセスがあるためGROWモデルについてご説明していきます。
まず用語の定義は以下になります。

G Goal 目標 達成したい目標は何か
R Reality 現状 現状はどうなっているのか
Resource 資源 使える資源(ヒト・モノ・カネ)は何か
O Options 選択 どのような選択肢があるか
W Wil 意志 本当に達成したい目標か

ALL FOR COACHES作成

これらの要素をどのように活用するかというと、以下概念図に沿ってご説明します。
まずはクライアントとの間でGoal(目標)の設定をします。例えば、部下の自立性を高めたいというGoal(目標)がクライアントから出てきたとします。次はGoal(目標)に対してReality(現状)はどのようになっているかを確認します。例えば、現状はクライアントからの指示がないと何もしない状況だとします。そうするとギャップが明らかになるため(※実際はもう少し丁寧に深掘りをします)、本当にそれを実現したいのか?というWill(意志)を確認したり、クライアントは現在どのようなResource(資源)を持っているのか、そして達成するためのOptions(選択肢)としては何があるか等を明らかにしていきます。

コーチングとは、このようなコーチの関わり方、スキル、プロセスを通じてクライアントの成長を最大化していきます。