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【論文まとめ】外部コーチより社内コーチが7倍効果的?最新研究が覆す常識

記事掲載日:2026年3月8日 
最終更新日:2026年3月8日

📄 この記事は学術論文の紹介記事です。
本記事は、Jones et al.(2016)による査読済み学術論文の内容を一般向けにわかりやすく要約・紹介したものです。記事内の情報はすべて論文に基づいており、メタメンター独自の主張・見解は含みません。詳細は末尾の参考文献よりご確認ください。


「部下の成長を支援したい」「チームのパフォーマンスを上げたい」。

そんな思いを持つビジネスパーソンにとって、コーチングは魅力的な選択肢として注目されています。近年、コーチングを取り入れる企業は増加し、国際コーチング連盟(ICF)の調査では、世界中でコーチングへの投資が急拡大していることが示されています。

しかし、多くの方がこんな疑問を持つのではないでしょうか。

「コーチングって、本当に効果があるの?」
「費用や時間をかける価値はあるの?」
「どんなコーチを選べばいいの?」

これらの疑問に対して、これまでは「体験談」や「個別の事例」に頼るしかありませんでした。コーチングは感覚的に「良さそう」というイメージがある一方で、科学的なエビデンスが十分ではなかったのです。

そこに一石を投じたのが、ジョーンズ、ウッズ、ギヨームの3名の研究者による論文です。この研究は、職場におけるコーチングの効果を調べた17の研究を統合・分析した「メタ分析」と呼ばれる手法を用いています。メタ分析とは、複数の研究結果をまとめて分析することで、より信頼性の高い結論を導き出す研究手法です。17の研究・合計2,267人のデータを使っているため、一つの研究では見えなかった傾向がはっきりと浮かび上がってきます。

研究の結果、コーチングには確かな効果があることが証明されましたが、同時に研究者の仮説を覆す「意外な発見」もいくつか明らかになりました。外部コーチと社内コーチの比較、360度フィードバックとの組み合わせ効果など、直感に反する結果が次々と出てきたのです。この記事では、論文の内容に沿ってその発見をわかりやすくお伝えします。

コーチングの効果は本物だった:3つのアウトカムで証明

まず最も重要な問いから始めましょう。「コーチングは効果があるのか?」という問いに対して、この研究は明確に「YES」と答えています。

研究では、コーチングの効果を3つのカテゴリーに分けて測定しています。

1つ目は「感情的アウトカム」です。これは自己効力感(自分にはできるという自信)、仕事への満足度、ウェルビーイング(心理的な幸福感)、ストレスの軽減などを指します。コーチングを受けた人たちは、受けていない人たちと比べて、こうした心理的な側面で大きな改善が見られました。

2つ目は「スキルベースのアウトカム」です。リーダーシップスキル、コミュニケーション能力、業務上の専門スキルといった、仕事で直接使える能力の向上を指します。コーチングによって、こうした実践的なスキルも向上することが確認されました。

3つ目は「個人レベルの結果」です。生産性の向上や、具体的な目標達成度など、数字として現れる成果を指します。

特に注目すべきは、3つ目の「個人レベルの結果」への効果が最も大きかったことです。コーチングを受けた人は、受けていない人と比べて生産性などの具体的な成果において、非常に大きな差が生まれることがわかりました。

これは非常に興味深い発見です。一般的に、研修やトレーニングは「知識の習得」や「スキルの向上」には効果があっても、実際の「仕事の成果」への転換が難しいとされています。しかしコーチングは、個人の目標に合わせた実践的なアプローチを取るため、学んだことが直接仕事の成果につながりやすいと考えられます。

コーチングが「感情面」「スキル面」「成果面」の三方向すべてに効果をもたらすことは、企業が人材育成に取り組む際の大きな根拠となるでしょう。

意外な発見①:外部コーチより「社内コーチ」の方が効果が高い

この研究で最も驚かされる発見の一つが、コーチの種類による効果の違いです。

多くの方は「外部のプロコーチを雇った方が効果が高いだろう」と直感的に思うのではないでしょうか。外部コーチは客観的な視点を持ち、組織の内部事情に縛られないため、より自由にコーチングができそうに見えます。研究者たちも当初、同じ仮説を立てていました。

ところが結果はまったく逆でした。

社内コーチによるコーチングの効果は、外部コーチによるコーチングの効果と比べて、約7倍もの差があったのです。これは研究者たちの予想を大きく裏切る結果でした。

なぜ社内コーチの方が効果が高いのでしょうか。研究者たちはいくつかの理由を考察しています。組織によっては「外部より内部発の解決策を好む文化」があること、戦略的な立場にいる人事責任者が社内コーチの信頼性を高める役割を果たすこと、そして社内コーチが組織の文化や職場環境をよく理解しているため、コーチーが職場で成果を出すためのサポートをより具体的に行いやすいこと、といった点が挙げられています。

ただし、この結果の解釈には注意が必要です。研究に含まれた「社内コーチを使った研究」の数が比較的少なかったため、論文の著者たちも今後さらなる検証が必要であると述べています。

意外な発見②:360度フィードバックとの組み合わせは「逆効果」になることも

もう一つの驚きの発見が、360度フィードバック(マルチソースフィードバック)との組み合わせに関するものです。

360度フィードバックとは、上司だけでなく同僚や部下など、複数の方向からの評価をまとめて本人に伝えるフィードバック手法です。「コーチングと360度フィードバックを組み合わせれば、さらに効果が高まるはず」と考えるのは自然なことでしょう。研究者たちも同じ仮説を立てていました。

しかし結果は予想と正反対でした。360度フィードバックを「使わない」グループの方が、「使う」グループよりもコーチングの効果が大幅に高かったのです。

研究者たちはこの結果をこう解釈しています。360度フィードバックで複数の人から様々な評価を受けると、コーチングを受ける人(コーチー)はその内容の処理に注意と精神的エネルギーを使いすぎてしまうのではないか、と。特にネガティブなフィードバックを受けた場合、その内容にとらわれてしまい、コーチングの本来の目的である「目標に向けた前進」に集中しにくくなる可能性があります。

この発見は、コーチングを導入している企業や、コーチングを検討している方にとって重要な示唆を含んでいます。「コーチング+フィードバック=最強の組み合わせ」という思い込みを見直す必要があるかもしれません。フィードバックを先に行い、コーチーが十分に内容を消化した後にコーチングを始めるなど、タイミングや使い方を工夫することで、より良い結果が得られるでしょう。

また、もう一つ重要な発見として、コーチングの形式(対面か電話・オンライン混合か)や、期間の長さ、セッションの回数は、効果にほとんど影響しないことも明らかになりました。短期間・少ないセッションでも、十分な効果が得られるということです。

まとめ:コーチングは「感覚」から「データ」の時代へ

この研究が示すメッセージはシンプルです。「コーチングは、科学的に効果が証明された人材育成手法である」。

2,267人のデータを分析した結果、コーチングはスキルの向上、感情的なウェルビーイング、そして実際の仕事の成果、このすべてにプラスの効果をもたらすことが確認されました。

また、論文の著者たちは実践者・企業向けにいくつかの示唆を述べています。コーチングの形式(対面・ブレンド)や期間・セッション数に関わらず効果が確認されたことは、より幅広い層がコーチングにアクセスできる可能性を示しています。一方で、マルチソースフィードバックの使用や外部コーチの起用については、その運用方法を慎重に検討することが重要だと指摘しています。外部コーチを活用する場合は、コーチが組織の文化や文脈を十分に理解できるよう、事前のオリエンテーションを行うことが推奨されています。

なお、論文の著者たち自身も研究の限界を認めています。分析に含まれた研究数が17件と比較的少ないこと、参加者の多くが管理職層であったこと、一部のモデレーター分析では対象研究数が限られていることなど、結果の一般化には慎重になる必要があると述べています。今後、さまざまな職種・業種を対象にした研究が積み重なることで、より精度の高い知見が得られることが期待されます。

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参考文献
Jones, R. J., Woods, S. A., & Guillaume, Y. R. F. (2016). The Effectiveness of Workplace Coaching: A Meta-analysis of Learning and Performance Outcomes from Coaching. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 89(2), 249–277. DOI: 10.1111/joop.12119