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ストーリー年表

記事掲載日:2025年9月28日 
最終更新日:2025年9月28日

ストーリー年表で進めた権限委譲と未来設計|地域に根ざし、未来を拓く「人の山本ビル」

旭川に本社を持ち、北海道でパチンコ店など地域に根ざしたBtoC事業を展開する株式会社山本ビル様。

事業承継に備える同社は「先代から受け継がれてきた想いや歴史を後継者に共有し、未来の戦略について対話できるようにしたい」という想いから、メタメンターのストーリー年表を導入しました。

ストーリー年表を通じ、同社は後継者を含む幹部間で、会社の歴史や今後の未来予測の共通認識を醸成。結果、中長期戦略の議論が加速し、社長の意思表明の明確化や、権限委譲の仕組み化といった具体的な進展にもつながっています。

本記事では、代表取締役社長の山本さん(以下、山本社長)、代表取締役副社長の江夏(こうか)さん(以下、江夏副社長)、専務取締役の西出さん(以下、西出専務)、後継者であり取締役室長の江夏慎太朗さん(以下、慎太朗さん)に、導入の経緯やストーリー年表の具体的な効果、今後の活用についてお話を伺いました。

※記載の役職・内容は取材時点のものです。

【お客様プロフィール】

会社名 株式会社山本ビル
創業 昭和27年10月
設立 昭和42年5月
業務内容 ・遊技施設の経営(パチンコアルファ)5店
・飲食店の経営(ペッパーランチ、いきなり!ステーキ、からやま、マリオンクレープ、バーガーキング) 8店舗
・コインランドリーの経営(ブルースカイランドリー)3店舗
・フィットネスクラブの経営(ビークイック)1店舗
・レンタルスペース事業
・不動産賃貸事業
・発電事業
従業員数 235名(役員・パート含む、2025年8月現在)
売上高 86億4,000万円(2024年9月決算)
ご導入サービス ストーリー年表
導入前の課題 ・後継者は入社しているものの、事業承継の具体的な道筋が不明確で、経営陣が本音で対話する機会を求めていた
・コロナ禍以降、目の前の業績回復に追われ、中長期的な経営戦略や未来像を語る機会が不足していた
導入後の効果 ・歴史と未来の見える化で「理念・転機」の共通認識が深まり、中長期的な経営戦略や未来像を語る場が自然に設けられるようになった
・権限委譲に向け責任範囲・監査など仕組み化の方向性が具体化し、AIや人口などのテーマで議論が活性化、後継者も動きやすくなった
・山本社長の意思表示が明確になり、取締役会の議論がより進みやすくなった。

事業承継の具体化と未来を描く対話の不足が課題だった

ー ストーリー年表を利用する前の課題を教えてください。

▼山本社長

事業承継や権限委譲、新規事業の多角化といった「未来」についての対話が不足していることに課題を感じていました。現金商売特有のリスクに対する懸念や「従業員に対して過度な負担をかけたくない」という想いから、権限移譲を進めたい気持ちはありながらも、なかなか踏み出せずにいました。

▼江夏副社長

「目の前の業績回復に意識が向き、長期的な議論の場を持つのが難しい」という課題もありました。

事業をサービス業に絞りすぎていたため、リスク分散ができておらず、コロナ禍で一斉に打撃を受けた過去があります。そのため、コロナ禍前に立てた中長期的な計画の実行が難しくなり、新たな未来像を描く機会がほとんどありませんでした。

▼慎太朗さん

私は、2023年の4月に後継者として入社したのですが、当時は事業承継に向けた具体的な道筋が見えていませんでした。会社の未来や中長期戦略とあわせて、事業承継について本音で対話したい、という想いがありました。

サービス導入の決め手は歴史と未来を同時に俯瞰できること

ー ストーリー年表を知ったきっかけを教えてください。

▼慎太朗さん

大学院の同期であり信頼のおけるメタメンター小泉さんに、以前から事業承継や経営上の悩みについて相談していました。

当初は、講義やグループワークのようなもの、他社交流などもご提案いただいていました。そのなかで「今の慎太朗さんにフィットするのは、歴史を振り返って創業の想いや大事にしてきた価値観を確認しつつ、未来に向けた方向性も描ける、過去と未来を同時に俯瞰できるストーリー年表ではないか」と小泉さんからご提案を受け、ビビビッと感じたのがきっかけです。

ー ストーリー年表の提案を後継者である慎太朗さんから聞いたときはどう思いましたか?

▼山本社長

ワークショップの内容をすぐにイメージできなかったのですが、「とりあえずやってみよう」「やってみてから考えよう」と楽しみな気持ちが大きかったですね。

▼江夏副社長

「中長期的なことをとらえきれていない」という課題は共通認識として自分も感じていたので、未来を考える機会になると前向きに受け取りました。

安心して入社したい会社へ。歴史の見える化で再確認できた「人の山本ビル」の原点

【ストーリー年表(歴史編)ワークショップの流れ】

▼Step1.事前準備(約2週間前〜)
1.売上・利益・従業員数などの定量情報の推移を提出
2.外部環境の変化(業界・社会動向)/内部環境の変化(人材・組織文化・設備など)をヒアリング

▼Step2.当日ワークショップ(約3時間)1.導入(15分):目的と意義を共有
2.全体俯瞰(20分):数値・外部/内部環境を年表で確認
3.主観体験の追記(45分):個々の印象的な出来事を年表に追加
4.投票ワーク(15分):重要だと思う出来事に投票
5.対話セッション(50分):自社のDNAを探る議論
6.振り返り(20分):過去の学びを未来にどう活かすか言語化

ー ストーリー年表(歴史編)ワークショップを体験してみて、どのような気づきがありましたか?

▼山本社長

昭和62年の「パチンコプラザアルファ(山本ビルのパチンコ新ブランドの屋号)」立ち上げは、会社の方向性を決定づけた大きな転機だった、と自社の歴史を俯瞰してあらためて実感しました。

62年の1店舗目から3年ごとに店舗を増やしていくことで会社の成長につながり、自分にとっても一番の節目となった出来事だと思っています。

▼西出専務

私は途中入社ということもあり、創業から70年以上にわたる会社の歴史に触れる機会はほとんどありませんでした。

ストーリー年表(歴史編)ワークショップを通じて、会社の歩みを体系的に理解でき、あらためて組織としての厚みを感じられました。これまで知らなかった部分を知ることで、自分が担う役割をより意識するきっかけになったと思います。

ーワークショップでは、各自が年表にエピソードを書き込み、さらにふせんを貼って「大事だと思う出来事」を可視化したと伺いました。そのなかで自然とふせんが集まったのが、経営理念の策定や新卒採用の開始の場面だったそうですね。

▲ある箇所に集中したふせん

▼江夏副社長

2004年に経営理念をつくったことが大きな転機だった、とストーリー年表(歴史編)ワークショップであらためて実感できました。

経営理念作成のきっかけは、新卒採用に際して「大学まで行った我が子がなぜパチンコ会社に入社するんだ?」 という考えをお持ちのご両親から反対があったことです。新入社員の採用に際しては、会社に対する不信感が生まれないような体制づくりが必要だと感じました。

経営理念のなかには、「家族に振り向いてもらえる会社にしたい」「自分の子どもが入社したくなる会社にしたい」という想いが込められています。

▼慎太朗さん

先代会長の時代を振り返るなかで、地元を大切にする姿勢が今の経営にも受け継がれているとあらためて感じました。

2004年に経営理念を策定したときを振り返り、「人を大切にする」というDNAがどう形成されてきたかを皆で再確認できたのは、大きな意味があったと思います。

未来は具体化できる!ストーリー年表|未来編の多様な視点で広がる選択肢

【ストーリー年表(未来編)ワークショップの流れ】

▼Step1.事前準備(約2週間前〜)

1.メタメンターで用意した未来年表のドラフトをもとに山本ビルならではのエッセンスを追加し未来年表を作成

▼Step2.当日ワークショップ(約3時間)

1.導入(15分):目的と意義を共有
2.未来年表の全体俯瞰(10分):社会と自社の未来を横並びで確認
3.個人ワーク(20分):気になる未来を10個選ぶ
4.対話セッション(30分):未来を共有し、5つに絞り込む
5.経営ストーリー構築・発表(45分):「自分が経営者ならどう動くか」を語る
6.振り返り・対話の深化(45分):背景や価値観を共有し、今後の必要な対話を確認

ーストーリー年表(歴史編)ワークショップに次いで、ストーリー年表|未来編も体験いただきましたよね。気になる未来を10個選んだ後に、未来を共有し5つに絞り込むセッションをおこなった際、印象に残ったエピソードなどありましたか?

▼山本社長

「旭川の人口減少」という現実にあらためて直面した点が、強く心に残っています。
かつて36万人いた人口が32万人を切っていることを知ってはいましたが、実際に数字で突きつけられると重みが違いました。

一方で、AIや通信技術の発達によって「遠隔での農業や漁業といった新しい可能性も描けるのではないか」とポジティブな視点も得られた点も良かったです。

▼西出専務

北海道や日本全体で進む人口減少の脅威を感じつつも、インバウンド観光の伸びや高齢化による外食需要の増加といった機会に気づけました。

ーセッションを経て「自分が経営者ならどう動くか」をお話いただきました。他の方の発表を聞いて、「自分とは違う視点だな」「なるほど」と感じた場面はありましたか?

▼江夏副社長

社長は理系的な視点で、自分はどちらかといえば文系的な発想だと感じました。(笑)
同じテーマでもそれぞれ視点が違うのだな、とおもしろかったです。

▼西出専務

接客を会社の柱としてとらえる発想や、AIを活用する観点が自分にはなく、これまで考えていなかった視点を得られました。

▼慎太朗さん

地方都市にいるからこそ、場所の制約を受けにくい最新技術を活用するメリットは大きいと感じました。AIなど新しいテーマについては、さらに違うメンバーとも議論を深めたいと思っています。

未来を見据えた視点と、社長の同意の明確化が前進を後押し—ストーリー年表の導入効果

同意の見える化と任せる仕組みで、権限委譲が前進

ー 導入前の課題として挙げられていた権限委譲の課題に対して、どのような変化が生まれましたか?

▼山本社長

前提として、山本ビルはもともと家族・親戚で回す商売観があり、外の人に任せる発想が持ちにくかったという背景があります。そのため、権限委譲について以前から考えていたものの、実際にはなかなか進められずにいました。

ストーリー年表ワークショップのなかで小泉さんから「権限委譲をしないことで何を守っているのですか?」と問われたとき、「人の山本ビル」という理念、すなわち「人を大切にしたい」という想いが、権限委譲を阻んでいたのだと気づきました。

社員を信頼したい一方で、現金商売ゆえに盗難などのリスクに対する懸念もあります。しかし、ストーリー年表ワークショップがきっかけで、「人の山本ビル」は実現しながら仕組みで解決することでブレイクスルーできるという気づきを得られ、監査・記録・役割分担といった仕組みの整理ができました。

▼江夏副社長

権限を渡すことの本質は「新しい挑戦を可能にする点」だと思っています。失敗を恐れていては新しいものは生まれません。ストーリー年表を通じて、失敗した場合には「全員の失敗」として受け止める共通認識を持てたことで、挑戦しやすい環境が整ったと感じています。

ー 経営戦略や未来像の共有という課題に対してはどのような変化がありましたか?

▼江夏副社長

未来年表を見て、「人口が減っていくなかで接客業だけでいいのか?」という問いが自然と生まれ、事業の柱をどう広げていくかを考えるきっかけになりました。
その延長で「新しい事業を誰が担うのか」というテーマも浮かび上がり、既存事業は既存の人材に任せる一方、まったく新しい事業は新しい人材に託す必要性も感じています。

ー 山本社長の同意を表現する方法についても小泉からフィードバックがあったと聞きました。

▼山本社長

これまでは、取締役会などで同意はしていても、大きなリアクションを取らないこともありました。

しかし、小泉さんから「反応がないと同意がないように感じてしまう」という役員や社員たちが思っていても言いにくかった点を客観的に伝えてもらいました。そのおかげで、自分が発言を控える姿勢が肯定の意思を伝わりにくくしていたのだ、と気がつきました。

▼江夏副社長

ストーリー年表ワークショップ後の取締役会で、明らかに社長の発言が多くなっているんです。成果はすでに現れていますね。

▼慎太朗さん

取締役会などで社長の同意を感じるようになり、話が進みやすくなったと思います。

外部視点×年表可視化の相乗効果

ー 他にもストーリー年表ワークショップを受けて気づいた点などがあれば、教えてください

▼山本社長

みんな違うからこその良さに気がつきました。どんどん考えを広げていけるのはストーリー年表の魅力だと感じています。

▼西出専務

歴史も未来も見える化されたことで、会社がここまで来た経緯=企業価値をあらためて把握できました。

小泉さんが作成してくれた未来年表は、業界を問わず幅広いテーマを長期の時間軸で整理してあり、将来に役立つツールだと感じました。未来年表だけでもお金を払う価値があるクオリティです。

特にストーリー年表|未来編は、課題とチャンスの両面を浮かび上がらせ、自社の強みをどう生かすかを考える出発点になったと思っています。

▼江夏副社長

ストーリー年表を通じて、山本ビルが成長した時期と停滞した時期が俯瞰でき、課題も明確になりました。「未来はわからない」ではなく「具体的に何をすべきか」と、とらえられるようになったことが大きかったです。

ー ストーリー年表はどのような方におすすめですか?

▼山本社長

社内だけで話していると見落としがちな点も、小泉さんの視点が入ることで浮き彫りになる点が良かったです。

外部の人から見た当社像も含めて確認できる点が良いと感じたので、いわゆる古い会社、意思決定が固まりがちな会社は、一度やってみる価値があるのではないでしょうか。

▼慎太朗さん

先輩経営陣の話や判断軸を受け取りつつ、会社の「これまで」と「これから」を一枚で見渡せるため、事業承継の当事者におすすめです。ストーリー年表ワークショップでの経験が、自分の提案や行動を後押ししてくれていると感じています。

地域に根ざし、多様な視点で未来を拓く組織へ

ー 今後、ストーリー年表で得た成果を社内でどのように活用・展開していきたいとお考えですか?

▼ 山本社長

ストーリー年表を通じて、外部の力を借りるメリットを感じました。

父から事業を承継した際も、副社長と「2人でやろう」と協力できたことが本当に大きかったと思っています。外部の方含め、協業できる仲間や人材を増やすことを視野に入れて、事業を進めていきたいですね。

▼江夏副社長

今回のストーリー年表は、体制づくりを始める大きなきっかけになりました。

現在の4人体制から一気に縮小して、後継者一人に負担が集中するような状況は避けたいんです。そのためにも、次世代の中核を担う人材をいかに育成し、組織としてどう支援していくのかを仕組み化していきたいですね。

「人の山本ビル」という理念を大切にしつつ、理念が実際に形として感じられる店舗経営を続けていきたいです。

▼西出専務

社員全員が笑顔でいられるようなウェルビーイングな生き方ができるようにやっていきます!

▼慎太朗さん

ストーリー年表を通じて、出会った方がみんな笑顔になれる、そのような集団でありたいと思いました。接客はもちろん、事業の中身や経営のあり方まで含めて、同じ想いで一体となって進めていきたいです!

承継に向けた対話の土台を引出す!

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記事監修

代表取締役社長 小泉 領雄南

2011年にGMOペイメントゲートウェイに入社。2016年、子会社の執行役員 経営企画室長に就任し、2020年の上場を経験。 早稲田大学MBA在学中にコーチングに出会い、翌年メタメンターを設立。 現在は、ICF認定PCCコーチとして、事業承継に関わる経営者・後継者向けコーチングを行うほか、コーチ・カウンセラー向けのウェルビーイング診断やCRMサービスの開発にも取り組む。元ICFジャパン運営委員。

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